「沖縄の未来は多くの問題を抱えた暗い未来なんでしょうか」。6月22日の参院選公示日の朝。参院選に出馬する自民新人の古謝玄太氏=公明推薦=が那覇市の大型商業施設前に集まった数百人の聴衆にこう問いかけ、そして否定した。「この沖縄は希望と可能性にあふれた明るい未来を描くべきだ」
会場の片隅には5歳の長男が描いた「星のカービィ」のイラストと「パパがんばってね」と覚えたての字がプリントされたのぼり旗がはためいていた。妻の亜希子さんとともに、4児の子育て中。子どもたちの笑顔いっぱいの沖縄を願う思いが、38歳の若さで立候補することへの背中を押した。
昭和薬科大付属高校に通うころから、沖縄のために貢献する人材になるとの将来設計を描いていた。進学した東京大で、県出身者を集めて県人会を立ち上げた。初代会長として学園祭でエイサーを披露し、観客も一体となってカチャーシーで盛り上がった。故郷の魅力を改めて感じ「沖縄のために」との思いを募らせた。
自身と同様に、沖縄への思いが強くとも、職がないために東京にとどまらざるを得ない友人や知人の姿を何度も見てきた。「こういう人たちが活躍できる環境をつくると、沖縄は面白くなる」。政治とは遠い印象がある東大大学院薬学系研究科在籍中、政治の道に進むことを決めた。その夢に向かい、大学院を中退し、地方行政を担う総務省へ入省。岡山県や長崎県など地方での現場経験も積んだ。
情報通信技術を活用した地方活性化のため、東京の民間企業に転職していた今年2月。学生時代の議員インターンを機に交流していた沖縄担当相の西銘恒三郎氏から、参院選出馬を打診された。折しも沖縄は復帰50年を迎え、次代の沖縄をどう創るるか模索が始まる年。「運命だと感じた」。2週間あまりで立候補を決意した。
選挙戦では経済分野を中心に、独自の政策を打ち出す。だが「私はアイデアマンではない」と自身を評する。「みんなの話を聞き、かなえるために動くことが性に合っている。それを期待されている」。キャッチフレーズの一つでもある「聞くげんた」の本領を国政の場で発揮するため、きょうも県内を駆け回る。
(’22参院選取材班)