週7でバイトもガス代滞納…交通費払えず職探しできない 高齢の年金生活者、毎週の値上がりに生活ぎりぎり


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「生活はぎりぎりだ」と話す宜野座村に住む70代の女性=沖縄市のパーソナルサポートセンター

 ロシアのウクライナ侵攻などが影響した食料やガソリン代の価格高騰に、県内からも苦しむ声が聞かれる。今年6月支給分から公的年金が0.4%引き下げられた高齢の年金生活者からは「食費がかさみ、交通費が払えない」との声が上がり、ぎりぎりの状況だ。長引く新型コロナウイルスの影響による雇用喪失や生活困窮。10日に投開票される参院選の争点に物価高騰対策が挙げられる一方、高齢者を取り巻く状況は悪化の一途をたどっている。

 「毎週値上がり」

 県によると消費者物価指数の総合指数(生鮮食品を除く)は2021年8月から増加し続けている。22年5月は前年の同月と比較すると生鮮野菜が13.0%、電気代が22.7%それぞれ増加した。

 中城村在住の70代女性は、安いスーパーを選んで買い物をしている。よく買うのは、1キロ298円のミックスベジタブルだ。週ごとに398円、498円と値上がりしたことがあった。「どうして毎週値上がりするのか」と思わず店員に尋ねた。現在は仕事を探しているが、新型コロナウイルスの影響や年齢を気にされ、なかなか仕事が見つからない。

 以前は那覇市のハローワークに行くため毎週バスで通っていた。交通費は往復で1000円を超える。食費がかさみ、交通費が出せないため最近は月に1回しか行っていない。「大学は卒業してほしい」という亡き母の願いで現在大学に通っている。「あと10単位で卒業できる」と笑顔を見せた。学費の支払いは年に2回。学費は猶予してもらいながら、週に2回通っている。

 1日2食に

 「亡くなった兄にたむける花を買うために、ガス代を滞納した」と話したのは宜野座村に住む70代女性。持病も多く、膝も悪いが週7でアルバイトをしている。暑いキッチンで1日立ちっぱなしの作業をする日もある。「本当はリハビリに通わないといけない」と話した。病院へは車で通っている。ガソリン代高騰の影響で、病院へ行く回数を少なくした。車内ではクーラーもつけていない。

 毎日の仕事でエネルギー補給は欠かせないはずだが、電気代や食材の価格も高騰し、最近は1日2食にしている。本当は料理が好きで「いろんな料理を作りたい」と話すが、肉は高くて買えず、ガスが止まることも頻繁にあるという。きょうだい9人は全員亡くなり、悩みを相談できる人がいない。「心配になり、眠れないこともある」と不安を吐露した。

 「制度」使い果たし

 中部の生活困窮者自立相談・主任相談支援員によると6月だけでサポートセンターの利用は5、6件増加した。多くはコロナ禍で困窮し、給付や貸し付けなどの制度を利用していた人。制度を使い果たし、次の手だてのない人が相談に来るという。フードバンクなどの食料支援も行うが物価高の影響もありストックはほとんどなくなった。

 6月支給分から年金が引き下げられるため「これから影響が出てくる。食費や公共料金を削る高齢者も増えるだろう」と同センターの支援員は懸念を示す。生活困窮者の生活を少しでも改善していくため「雇用を増やしてほしい」と切実な声を上げた。
 (金盛文香)