心臓で血液が逆流する「僧帽弁閉鎖不全症」に新治療 琉大病院が成功、傷、痛み少なく患者負担減


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僧帽弁閉鎖不全症の新しい治療法について会見する琉球大学病院の(右から)大屋祐輔院長、第三内科、心臓血管低侵襲治療センターの岩淵成志特命教授、第三内科の池宮城秀一助教、同科の當間裕一郎助教=6月28日午後、同院

 琉球大学病院(大屋祐輔院長)は6月28日、県内で初めて心臓の僧帽弁(そうぼうべん)閉鎖不全症に対する新しい治療法「経皮(けいひ)的僧帽弁接合不全修復術」に成功したと発表した。同院はこの治療ができる県内唯一の施設として2021年10月に認定され、同年12月に初めて治療を実施。22年5月31日時点で60~80代の6例の患者が同治療を受けた。いずれも経過は良好だという。

 僧帽弁閉鎖不全症は心臓の弁の一つである僧帽弁が正常に閉じなくなり、左心室の収縮時に血液が左心室から左心房に逆流する病気。重症になると息切れやむくみなどの心不全症状が表れ命に関わることがある。

 薬物治療でコントロールできない場合には、僧帽弁を修復したり人工弁に置き換えたりして逆流を根治する外科手術が一般的に推奨される。だが高齢で体力が落ちている患者や、過去に心臓の手術を受けている患者などにとっては負担が大きく、実施が困難な場合が多かった。

 新しい治療法では、全身麻酔下で足の付け根の血管からカテーテルを挿入し、カテーテルを通して僧帽弁のずれを改善させて逆流を減らすことができる。従来の外科手術と異なり胸を大きく切開せず、心臓を止めずに治療できる。身体への負担が軽く、入院期間も1週間程度と短く済む。傷も1センチ未満で痛みも少ない。

 一方で逆流を完全になくすことは難しく、僧帽弁が開いた時の面積が狭くなることにより左心房から左心室への血流が妨げられる軽度の僧帽弁狭窄(きょうさく)症になるリスクもある。僧帽弁の形態により治療が困難な患者もいるため、最終的には循環器内科医や心臓血管外科医、麻酔科医などで構成する「ハートチーム」がカンファレンス(会議)をした上で適応を決める。

 同院第三内科、心臓血管低侵襲(ていしんしゅう)治療センターの岩淵成志特命教授は「患者さんに『こういう新しい治療法がある』と提案できるようになった。県内で治療が完結するので、沖縄で同じ疾患を抱えている方にとっては朗報だと思う」と話した。
 (嶋岡すみれ)