米軍基地や沖縄振興、どう対応? 参院選2候補が紙上クロス討論


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 10日に迫った第26回参院選の投開票に向け、琉球新報社は、沖縄選挙区(改選数1)に立候補している無所属現職の伊波洋一氏(70)と、自民新人の古謝玄太氏(38)=公明推薦=の主要2候補から相手候補への質問を募り、それぞれ文書で回答してもらった。基地問題や沖縄振興などに関する質問について紙上で討論した。(文中敬称略)(’22参院選取材班)


◆古謝氏から「時給1000円実現できず」/伊波氏「政府と自民党が反対」

 古謝 あなたが6年前の前回参院選で掲げた公約で実現したものは何か。その中でも、毎年3%ずつの引き上げではなく「最低時給をただちに1000円以上にアップ」を掲げていたが、実現できていないことについてどのように考えているか。

 伊波 沖縄県の「21世紀ビジョン」「アジア経済戦略構想」の実現に協力し、観光産業や中小企業の振興を図ることを公約したが、入域観光客数は1000万人を突破した。鉄軌道の整備も改正沖縄振興法の付帯決議に盛り込み、政府の基本方針に「所要の措置を講ずる」と明記させた。県内へのコロナ感染の拡大を防止するために、出発地での無料PCR検査も実現した。最低賃金は693円から820円まで2割近く上がったが、政府・自民党の反対で1000円には至っていない。6年前の参院選で「最低賃金1000円を目指す」と公約したのは自民党自身だ。公約を守り、ただちに1000円が実現するように協力すべきだ。

 古謝 あなたが目指す「基地のない平和な沖縄」とは、米軍基地がないということか、自衛隊の基地も一切ないということなのか。基地を認めないとするのであれば、どのように日本の安全保障を確保する考えか。

 伊波 「基地のない平和な沖縄」は、米軍に土地を奪われ、基地負担に苦しめられてきた県民共通の願いだ。50年前「基地のない平和な沖縄としての復帰」を求めた屋良建議書の要求は、玉城知事の新たな建議書に引き継がれている。外交を通じた周辺諸国との対話と信頼醸成こそが、最大の安全保障だ。あなたの主張する「現実的な安保体制」は、自民党が推進する辺野古新基地建設、軍用機爆音や米兵による事件・事故の増加など沖縄の基地負担を重くする日米同盟の強化、住民避難が不可能な南西諸島への自衛隊ミサイル部隊配備など、抑止力強化を名目に、沖縄を本土防衛の「基地の島」にして、「沖縄を再び戦場にする」道だ。

 


◆伊波氏から「新基地建設を推進か」/古謝氏「危険除去実現が重要」

 伊波 あなたは候補者座談会で、県民投票で7割以上が反対の意思を示した辺野古新基地建設について「容認してこれを進めていく必要がある」と、工事の加速化まで提案している。民意に反する新基地建設を容認だけでなく推進するということか。

 古謝 戦争も軍隊も基地もない平和な世の中は私も心から望んでいる。しかし残念ながら、ロシアのウクライナ侵略を見ても、現実的な安全保障体制を考えなければならない。日本の安全保障は、国際社会との対話をしっかりと深めるとともに、日米安全保障体制を維持することが必要だと考える。一方で、普天間飛行場の危険性除去はできるだけ早く実現すべきである。県外・国外に移転できるのであればそれが良いが、現実的には、辺野古移設が最も早い危険性除去方策だと考えており、「容認」とした。普天間飛行場の危険性除去をできるだけ早く進めるために、移設工事を着実に前に進めることが重要だと考える。

 伊波 あなたは一括交付金について、政府と同様「効果の高い事業への集中」「効率的・効果的な予算執行」を主張しているが、自民党政権による予算削減で県民の安全に関わる事業まで先送りを余儀なくされている。予算の増額こそ必要ではないか。

 古謝 予算には国民からの税金などの財源が必要であり、あるだけあったほうが良いという意見には賛同しない。国民の皆さまからいただく税金を使う以上、その効果の説明や、効率的な予算執行はどんな予算であっても当然に求められるものである。2022年度の一括交付金については、県から国に対して十分な協議・説明がなかったのではないかと考えている。なお、41市町村全てを回って県民の声を聞いた上で、今の一括交付金の予算が沖縄のより良い未来を実現するために不十分であることについては賛同するものであり、これまでの経験やネットワークを活かして、国と県のパイプ役として協議の円滑化に尽力したい。