【記者解説】繰り返されてきた米軍の流弾事件、原因究明には地位協定の壁 米金武・伊芸に「銃弾」


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銃弾のようなものが見つかった民家をブルーシートで覆う県警関係者ら=7日午後5時40分、金武町伊芸

 米軍が実弾射撃を実施するキャンプ・ハンセンとシュワブに隣接する金武町や恩納村、名護市など本島北部では、民間地などへの流弾事件が繰り返されてきた。今回、金武町伊芸区で見つかった銃弾も流弾であれば、米軍の再発防止策に疑念が生じることになる。

 キャンプ・ハンセンでの直近の流弾事件は、恩納村安富祖の基地内ダム工事現場で工事車両などが銃弾で破損した2017年4月の事故がある。米軍は事件を受け、流弾を発射した可能性のある射撃場の使用を中断したが、同11月に防止策として発射方向の変更などをしたとし、使用を再開した。翌18年6月には、名護市数久田の民間地の作業小屋にシュワブ内射撃場から流弾が着弾している。

 米軍の公務中に発生した事件では、米軍側が第1次裁判権を持つと規定する日米地位協定が県警の捜査を阻む。17年の恩納村安富祖の事件でも県警は18年3月、被疑者不詳のまま那覇地検に書類送検し、地検も不起訴処分とした。流弾事件は、原因究明と米側の責任追及が不徹底のまま終わった事例が少なくない。

 伊芸区では記録に残る限りで1956年から2008年までに42件の流弾事件が繰り返されてきた。今回の銃弾発見で住民の不安も募る。米軍には事実関係の説明も含め、透明性の高い対応が求められる。
 (塚崎昇平)