10日に投開票された参院選沖縄選挙区は、無所属現職の伊波洋一氏(70)が自民新人の古謝玄太氏(38)=公明推薦=の追い上げを振り切り、事実上の一騎打ちを制して再選を果たした。全国的に自民が大勝する中、沖縄では今回も名護市辺野古の新基地建設に反対する「オール沖縄」勢力が勝利した。自民は沖縄選挙区で2013年から4連敗を喫した。県内政局の舞台は今後、8月25日告示、9月11日投開票の県知事選へ移る。
名護市辺野古の新基地建設阻止を掲げた伊波洋一氏の勝利は、新基地建設に反対する民意の根強さを意味する。沖縄の日本復帰50年の節目の選挙で、当時から訴えてきた「基地のない平和な沖縄」の実現を願う県民意識を映し出した側面もありそうだ。
古謝玄太氏を擁立した政権与党は、昨年の衆院選や今年の4市長選と同様、新型コロナウイルス禍や物価高騰などにあえぐ県民生活や県経済を背景に、立て直しに向けた「国とのパイプ」の必要性を強調した。ただ、衆院選や首長選とは異なる全県選挙だけに、施設整備などの経済支援策が見えづらく、効果は限定的だったとみられる。
知事選や県民投票などで示された新基地反対の民意を省みず、沖縄関係予算の減額などを交えながら新基地建設を進める政権への不信感が投票行動にも表れた格好だ。
全国的な自民大勝の陰で、沖縄の民意をどう捉えるか、民主主義とは何かを政権に改めて突き付ける結果でもある。
伊波氏は選挙戦中、古謝氏から現職としての実績の追及を受け続けた。票差が詰まったのはその追及に一定の説得力があったからとも言える。当初は経済再建・振興と基地問題の二本柱で選挙戦に臨んだが、途中から基地問題への主張を強めた。辺野古や安全保障観を巡る対立軸を明確化する狙いだけでなく、経済分野の実績不足の側面もうかがわせた。
基地問題での政権に対する追及姿勢はそのままに、経済振興をはじめとする政策実現にどう取り組むか。伊波氏に限らず、「オール沖縄」の野党国会議員は県民に提示し続ける必要がある。
(大嶺雅俊)