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ジェンダー平等の社会に <伊是名夏子 100センチの視界から>126


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
オンライン講演会。コロナ禍はオンラインの選択肢が増え、便利にもなりました

 Netflixのドラマ「ヒヤマケンタロウの妊娠」がとてもおもしろいです。少数ではあるけれども、男性も妊娠、出産をする世界。主人公のヒヤマケンタロウは広告会社でバリバリ働く中、急な妊娠で、一気にマイノリティーの立場へ。いろいろな経験をし、世の中の見え方が変わっていきます。

 先日、自民党の桜田義孝元五輪相は「少子化は大変な問題で、結婚しても子どもをつくらない。男の人は結婚したがっているけれど、女の人は無理して結婚しなくてもいいと言う人が増えている。女性は男の人にもっと寛容になっていただきたい」という発言をしました。婚姻率、出産率の低下を、女性だけの問題だと捉えた発言にはがっかりでもあり、怒りも沸いてきます。

 結婚したら、女性だけに多大な変化を強いられることが多い今の日本。選択的夫婦別姓が認められず、婚姻後は95%以上の女性が男性の名字になっています。内閣府の調査では、女性は男性の7倍の家事育児をしていると言われています。女性の6割が非正規雇用で、賃金格差も大きいです。女性は生きづらい環境に置かれ、男性に比べて不利益が多いからこそ、結婚したいと思えない、子どもを持ちたいと思えないのです。

 しかし問題は女性の方にあって、変わるべきなのは女性だと考える人が、政治を握る人にいるのです。自分は妊娠、出産の可能性はないし、育児をしなくてもいい状況にあるからこそ、そう言えるのかもしれません。しかし男性が女性になることなんて、ほとんどありません。実際に経験していないから分からない、ではなく、想像力を働かせることこそが大切です。そして不利益を受ける人には、可能な限りそれをなくしていくための保障、制度があってほしいです。

 ジェンダーの話をすると、男性が責められている気になることがよくあるそうですが、男性を責めているのではなく、性別にとらわれることなく、みんなが一緒に住みやすい社会に変えていきたいだけなのです。ジェンダー平等を進めることで、男性も育休を取りやすくなったり、自分らしい生き方を選びやすくなったりと、男性の選択肢も増えるのです。社会を変えていく時、不安はつきものですが、それを恐れずに、生きやすい社会を築いていきたいですね。


 いぜな・なつこ 1982年那覇市生まれ。コラムニスト。骨形成不全症のため車いすで生活しながら2人の子育てに奮闘中。現在は神奈川県在住。