比嘉再起戦、薄氷の勝利 判定で辛勝「倒れても勝っても」の覚悟で ボクシングバンタム級


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
再起をかけた一戦でフローイラン・サルダールと打ち合う比嘉大吾(右)=13日、東京の大田総合体育館(安里洋輔撮影)

 世界ボクシング評議会(WBC)元フライ級王者の比嘉大吾(志成)=浦添市出身、宮古工高出=は13日、東京都の大田区総合体育館でバンタム級ノンタイトル8回戦を行った。世界ボクシング機構(WBO)元アジア・パシフィック・スーパーフライ級王者で東洋太平洋(OPBF)バンタム級10位のフローイラン・サルダール(フィリピン)に2―1の判定で辛勝した。初回から攻めるが、3回に右まぶたを切り4回に右カウンターでダウンを喫した。5回以降反撃に出て攻め、逆転した。昨年4月に沖縄でのWBOアジア・パシフィック・バンタム級王座初防衛に失敗して以降、1年3カ月ぶりの再起を飾った。比嘉の戦績は21戦18勝(17KO)2敗1分け。メーンのWBOスーパーフライ級タイトルマッチ12回戦では、王者で33歳の井岡一翔(志成)が同級1位で40歳のドニー・ニエテス(フィリピン)を3―0の判定で下し、5度目の防衛を果たした。自身の日本選手世界戦最多勝利数を20に伸ばした。井岡の戦績は29勝(15KO)2敗。

 「負けちゃったと思ったので良かったです」。再起戦を勝利で飾った比嘉から本音が漏れた。「(相手のパンチが)効きました。ぼーっとしている」。赤く腫らした顔が、激戦を物語っていた。

 KO勝利が持ち味の比嘉は、序盤から相手の懐に飛び込み果敢に仕掛けた。しかし、アッパーとフックで畳み掛ける得意の攻撃をいなされ、逆に的確にパンチを当てられた。3回には右まぶたを負傷し、4回にはダウンを喫し、土俵際に追い込まれた。

 相手の疲労もあり、5回以降は盛り返し、連打でコーナーに追い詰める場面も。決定打は放てず、最終ラウンドまでもつれる展開で、ジャッジも2―1と割れた。最後は「倒れても勝っても」と覚悟を決め、前に出る姿勢が薄氷の勝利をたぐり寄せた。

対戦相手のフローイラン・サルダールと健闘をたたえあう比嘉大吾(左)

 山あり谷ありのボクシング人生を象徴するような一戦だった。

 2014年のデビューから破竹の勢いで勝利を重ね、21歳でWBCフライ級世界王者に。18年2月、県立武道館での凱旋(がいせん)試合で王座を防衛した。

 しかし、同4月の防衛戦で計量に失敗し、王座を剥奪(はくだつ)。その後、バンタム級に階級を上げて復帰した。21年1月にWBOアジア・パシフィック・バンタム級王者となったが、世界王座挑戦の試金石となる4月の沖縄での防衛戦で敗れていた。

 自らの拳で世界への扉を再びこじ開け、「ファンの皆さんを安心させる試合をしたい」と次戦での飛躍を誓った。
 (安里洋輔)