世界遺産の島に放置車両30台 町「所有者自ら撤去を」訴えるも名乗り無く処理進まず 竹富町西表島


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 【竹富】世界自然遺産の島、西表島の港など沖縄県竹富町内の島々で、放置されたままとなっている車両が目立っている。町は車両に勧告書を貼るなどし、所有者に車を処理するよう要請しているが、応じる人はいない。状況を改善しようと石垣市内の民間会社が処理を名乗り出ており、年内には始まる見込みだ。だが町は「まずは町民が自ら撤去してほしい」と訴えている。

西表島内で放置されている車両。フロントガラスには町からの勧告書が貼られているが、名乗り出た所有者はいない=6月19日午後、竹富町西表島

 西表島の大原港の一角に、窓ガラスが割れたりタイヤが外れていたりする車両が20~30台ほど集まっているエリアがある。どの車両も一見して乗ることができないと分かるほど、ぼろぼろの状態だ。近づいてみると車両には、期限内に名乗り出なければ廃物として処理すると注意する内容の町の勧告書が貼られている。町によると、これらは所有者不明のまま港内に放置されている車両だ。

 通常、車両を処理する場合、処理業者に車両を引き渡す必要がある。だが町内には業者がおらず、車両を処理するためには石垣島へ船を使って輸送しなければならない。こうした事情で適切に処理されず、放置されたままとなっている車両が発生するとみられる。

 処理時の車両の海上輸送費については補助があるものの「一部の町民が不法投棄と認識せず、放置しているのではないか」(町担当者)。

 一方で、行政による車両の撤去は、簡単にはいかない。他者の所有物を処理するための手続きを踏まなければならないからだ。また町には処理するだけの予算もない。

 町は、所有者に名乗り出るよう呼び掛けているが名乗り出た人はいない。町の担当者は「もしかしたら町民は『町が片付けてくれる』と思っているのではないか」と指摘し、自己責任での処理が原則だと強調する。

 こうした状況に石垣市内の業者らが善意で、車両の処理を名乗り出ている。町は業者らと協力し、年内には処理に着手する予定だ。

 町の担当者は「本来は自己責任で処理するべきであり、こうした処理を今後することはない。所有者は名乗り出て、自ら処理してほしい」と訴えている。

(西銘研志郎)