「AVは性暴力の記録の商品化」 「AV新法」の問題点指摘、被害が起きる前の対策が必要 那覇で学習会


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「AV新法」の問題点などについて語る北原みのりさん(壇上左)と井戸まさえさん(同右)=11日午後、那覇市内

 アダルトビデオ(AV)の出演被害を防ぐことを目的に契約解除権や事業者への罰則を定めた、いわゆる「AV新法」について学ぼうと、11日、作家の北原みのりさんと元衆院議員でジャーナリストの井戸まさえさんによる学習会が那覇市内で開かれた。フラワーデモin沖縄のメンバーが企画した。

 同法は成人年齢の引き下げに伴い、18、19歳が保護者らの同意がない契約を後から取り消せる「未成年者取り消し権」の対象外になることから、出演を強要される被害が増える懸念があるとして、支援団体が2月ごろから立法措置を要請していた。

 6月に議員立法で成立した同法は、AVの出演や公表は出演者の心身の健康や生活に重大な被害を生じさせるとし、出演者は年齢や性別を問わず、映像公表後原則1年まで無条件で契約解除できるよう定めた。また制作側は撮影時に求める性行為の具体的な内容などを出演者に事前に説明しなければならない。虚偽の説明や威迫行為をした場合、3年以下の懲役または300万円以下の罰金を科す。

 当事者や支援団体からは同法により「救われる人がいる」と歓迎の声が上がる一方で、撮影時の性交は禁止されていないことから、見直しを求める声も上がっていた。北原さんは「被害は性交を求められるところから起きている。だが今回の法律は被害が起きてからしか救済ができない内容になっていて、被害の原因を止めようとはしていない」と指摘。問題点として(1)金銭を伴う性行為の合法化につながる(2)契約で定める事項を法定した上で事後救済のための特則を設けただけ(被害が起きてからでないと救済できない)(3)狭義の「強制」(4)契約の瑕疵が「被害」とされていること―を上げ「AVは性暴力の記録の商品化だ。国がAVについて定義したことで、むしろAV業界にとっては大手を振って仕事ができる状況が生み出されたのではないか」と懸念を示した。また北原さんが呼び掛け人の一人となったフラワーデモの果たしてきた役割や重要性についても触れた。フラワーデモは2019年3月に4件の性暴力事件の無罪判決が相次いだことをきっかけに同年4月から東京と大阪で始まり、全国各地に広がった。デモをきっかけに有罪判決が逆転無罪になった経験などについて振り返り「運動は自分たちの声を社会の声にしていく『声の公論化』が目的なんだと気付いた」と、声を上げ続けることの意味について語った。

 今後の課題として、現在13歳の性交同意年齢の引き上げや、時効を現在の10年から延長することなどを求め「同意のない性行為イコール性犯罪だ。今こそ被害者を中心とした性犯罪の刑法改正が必要だ」と話した。

 井戸さんは「問題を投げかけ、共有する社会運動が必要だ。自分だけじゃなくいろんな人の思いを聞くと社会化できる」と話し、女性の政治家を増やす重要性や、世代を超えて活動していく大切さについて語った。
 (嶋岡すみれ)