「戦争が近い」今、再演 沖縄戦題材「cocoon」 東京で7年ぶりに


社会
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「cocoon」の舞台=2015年

 太平洋戦争末期の沖縄戦で動員された少女らがモチーフとなった舞台「cocoon」が東京で幕を開けた。7年ぶりの再演。劇団「マームとジプシー」を主宰する劇作家で演出家の藤田貴大は「今は戦争が近いと感じる。その可能性があると思う感覚が2015年とは全然違う」と言い、大幅に手を加えた脚本と演出でツアーに取り組む。

 今日マチ子さんの同名漫画が原作。13年の初演を機にたびたび沖縄に足を運び、各地を訪ねては、ひめゆり平和祈念資料館(糸満市)に戻り、考察を重ねて視野を広げてきた。「沖縄戦の激戦地となった南部にばかり目を向けていたが、地域によって海や食文化、言葉のイントネーションも違うことを知りました」

藤田 貴大さん

 2月には、水をモチーフに、沖縄の現在と過去を交差させた新作「Light house」を那覇文化芸術劇場で発表。米軍基地問題にも向き合った。間もなく、ロシアがウクライナへ軍事侵攻した。

 「戦争は人ごとではないんですよ、と必死に訴えていた」という15年の公演。少女たちの抽象的なせりふが反復されることで、観客に臨場感と、作品に没入するような身体的共感をもたらす演出が、反響を呼んだ。

 しかし今、人々は報道で日々、惨状を目の当たりにして「一人一人の中に、既に戦争がセットされている」。7年前よりも、具体的に沖縄戦の実態を知ってもらう段階にあると考えた。「作品と距離を保って、冷静に理解してほしい」と、地上戦がどのように進んでいったのか、脚本には史実を時系列で組み込んだ。

 ツアーは新型コロナウイルスの感染拡大で延期され、沖縄の日本復帰50年に重なった。「その数字がなくても沖縄の歴史を近くの人と話していたい」
(共同通信)