サメ退治の民話がヒントに 創作昔ばなし・宮國敏弘さん 琉球新報児童文学賞


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「満月の夜に」で創作昔ばなし部門正賞を受賞した宮國敏弘さん=2日、宮古島市の自宅

 第34回琉球新報児童文学賞は、短編児童小説部門が比嘉稔さん(62)=那覇市、創作昔ばなし部門が宮國敏弘さん(65)=宮古島市=にそれぞれ決まった。2人はこれまでの創作活動で培った力を最大限に作品に込め、正賞へとつなげた。受賞の喜びと今後の活動への意欲を語った。

 宮古島市伊良部に残るサメを退治した英雄の民話をヒントに、子どもたちの冒険心と好奇心をかき立てる物語を仕上げた。第34回琉球新報児童文学賞・創作昔ばなし部門の受賞作「満月の夜に」を執筆した宮國さんは3度目の挑戦で正賞を手にした。

 受賞の一報を受け「挑戦を続けてきただけに、驚きでいっぱい。やっとスタートラインに立てたような気持ちだ」と喜んだ。第32、33回も同部門に応募し「正賞該当なし」の佳作だった。

 今作を書き出すに当たり、審査員の講評を何度も読み返した。「より良い作品が生まれるのを待ちたいから正賞を見送った」とする審査員の期待値を込めた厳しさに挑む思いだった。

 「満月の夜に」は宮古方言をちりばめながら、島民を苦しめるマジムン(魔物)を退治する島の若者の姿を描いた。冒険や家族、絆を縦軸に島の文化や風習、祈りを横軸に編んた。重視したのテンポの良さだ。「子どもたちが、ワクワクしながら身を乗り出し、物語の先を訪ねてくるイメージを持って工夫した」と振り返る。

 サンゴの産卵や神歌、御願バーリーなど沖縄の伝統文化も物語を形作る骨となっている。「子どもたちが自分を育ててくれた島の環境を見つめるきっかけになれば」と願った。
 (佐野真慈)