【深掘り】那覇市長選、難航する候補者選び 両陣営とも複数の名が挙がるも知事選絡み複雑化 


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 10月23日投開票の那覇市長選に向けて、市政与党の「オール沖縄」勢力と野党自民の双方で候補者選考が遅れている。過去2回の那覇市長選と同様、両陣営とも9月11日投開票の知事選とのセット戦術をもくろむが、先行きは不透明だ。参院選に加え、両勢力が有力候補と位置づける知念覚副市長のスタンスが明確でないことによる双方の「様子見」が選考の遅れを引き起こしている。

那覇市議会6月定例会で市長選に関する質問に答える(左から)知念覚副市長、城間幹子市長=6月14日、市議会議場

 自民側は選考委幹事会を30日に開き、選考スケジュールや選考基準などを協議。知事選の告示前に候補者決定を目指す方針を確認した。一方で本紙取材に、仲村家治県議(自民1区副支部長)が「スケジュールがずれる可能性もゼロではない」と述べた。

 知念氏は名護市辺野古の新基地建設阻止を掲げるオール沖縄を築いた故翁長雄志前市長(前知事)の片腕として台頭し、翁長氏後継の城間幹子市政の副市長を務めてきた。

 自民からの知念氏擁立を目指す立場の関係者からは、知事選と市長選の「切り離し」議論も浮上している。知事選で自民が擁立する佐喜真淳氏が辺野古容認を掲げることに加え、オール沖縄が支援する現職の玉城デニー氏の選挙母体会長に城間氏が就任しているため、セット戦術にこだわれば知念氏の擁立が難しくなるという考えだ。関係者は「事実上の後継指名をしてくれた城間氏が相手側にいる中でマイクは握りにくい」と解説する。

 ただ全県選挙の知事選では大票田・那覇の得票が勝敗の鍵を握るため、セット戦術は「大前提」とする意見もある。西銘啓史郎県議らの名前も候補に取り沙汰されており、選考委内でのせめぎ合いが加速しそうだ。

 一方でオール沖縄勢の市政与党の選考で有力視されているのが知念氏と、故翁長前知事の次男で県議の翁長雄治氏だ。

 知念氏は6月、一部の与党市議に「翁長前知事の遺志を継ぐ。辺野古新基地には反対だ」と発言したとされるが、公の場では明言していない。与党側は辺野古反対の姿勢を明確にできるかを注視するが、不信感もくすぶる。

 その中で雄治氏待望論が高まるが実績不足を指摘する声もある。与野党が拮抗(きっこう)する県議会構成などを踏まえ、雄治氏自身も市長選出馬には消極的だとされる。

 知念氏を推すオール沖縄関係者は「知念氏は辺野古反対を明言する覚悟を決めないといけない。オール沖縄にはこれまでの経緯や不信感を飲み込む度量が必要ではないか」と指摘した。

(伊佐尚記、大嶺雅俊)