在沖米空軍が嘉手納基地の元駐機場「パパループ」地区に防錆(ぼうせい)整備格納庫を建設する計画について、嘉手納町は「良き隣人としてのこれまでの見方が変わってくる」(當山宏町長)と基地との関係見直しにも言及し、建設を強行しようとする米軍の姿勢に反発を強めている。
他方、防衛省は米側に計画撤回や中止は求めず「嘉手納町と米軍の間に立って調整を進める」(岸信夫防衛相)と中立的な立場を示す。米議会で建設計画の審議も続き、現行計画の既定路線化が進む中、町側の危機意識とかい離した国の悠長な対応が際立つ。
「第二の選択肢」
パパループは第353特殊作戦群区域の拡張工事が完了するまでの「一時的な駐機場」として使用されてきたが、予定期間を超えて使われ続けている。以前からパパループの使用に反対してきた町側にとって、格納庫整備計画は「一度造られてしまえば長期にわたって使われる」(仲村渠兼栄嘉手納町議会議長)と認める余地のない計画だ。
29日の在沖米空軍第18航空団への要請後、取材に応じた當山町長によると、町は米軍に対し施設建設について「計画の完全停止」を求める一方で「第二の選択肢」として別の場所での建設を提案した。米軍からは対応について具体的な言及はなかった。
町の抗議をよそに、米議会では格納庫整備費を含む国防権限法案の審議が進んでいる。當山町長によると、5月以降の米側の説明では、費用の予算計上については言及がなかったという。「正確な情報が伝えられていなかったと思わざるを得ない」と不快感をあらわにした。
「対応はこれから」
切実な危機感を表明する嘉手納町の動きに、県も歩調を合わせる。県関係者は「県としても防衛局などに(地元への)配慮を求めるなどアプローチは必要になってくるだろう」と見通す。県は政府機関などへの要請や、ワシントン事務所での情報収集の実施といった検討に入った。
政府関係者によると、防衛省も沖縄防衛局による地元レベルの情報収集が中心だという。防衛省幹部は「計画の詳細を確かめている段階で、具体的にどう対応するかは今後の話」と明かす。米議会での予算審議段階になると、現地の司令官だけで計画の中止や変更を決められないのが実情で、防衛省が情報収集に時間を掛けている間に、予算が確定してしまう恐れもある。
町は8月中旬に外務省・防衛省に基地の運用について定期要請をし、その中でも格納庫整備について撤回を求める方針だ。當山町長は「(政府は)地域への負担を最小限にするとして、働きかけるというところで止まっている。具体的にどう動くかの情報はない。ぜひ動いてほしい」と強く求めた。
(名嘉一心、明真南斗、塚崎昇平)