戦果アギヤ-の「正義」とは 沖縄の戦後描く舞台「沖縄の火種~1947年のナツ子~」が県内初公演


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ウチナーの明るい未来を信じ、力強く笑う金城清真(中央・岡本高英)=7月17日、うるま市石川会館

 演劇集団ワンダーランドの沖縄初公演作品「沖縄の(うちなーぬ)火種(うちけびー)~1947年のナツ子~」(日本劇団協議会、うるま市教育委員会主催、竹内一郎作・演出)が7月15~18日の4日間、うるま市石川会館で上演された。沖縄戦後間もない沖縄で、米軍基地から物資を奪う戦果アギヤーで人々が暮らす架空の集落を舞台に、ウチナーンチュの力強い生きざまを描いた。文化庁統括団体によるアートキャラバン事業(コロナ禍からの文化芸術活動の再興支援事業)の一環。17日の公演を取材した。

 金城ナツ子(大橋芳枝)と金城清真(岡本高英)は仲間と、戦果アギヤーで食いつないでいた。米軍に「沖縄にいるのは割に合わない」と思わせて沖縄から追い払う「正義の戦い」だとし、基地から物資を奪い続け、核爆弾までも盗み出していた。爆弾を盗まれたことに気付いた米軍人は、取り返そうと躍起になるだけでなく、ナツ子たちの集落がある一帯を米軍の新しい滑走路にするため、土地立ち退きを迫る。

 一方、清真は爆弾を利用して、米軍の要求をはねつけ、エイサー祭を開くことを目指して行動を始める。「琉球独立党」に助力を頼むが、試みは失敗する。しかし、本土から沖縄に来ていたマンガ家の木塚修身(尾ノ上彩花)の機転で難局を乗り切るのだった。

 ナツ子たちの集落は、終戦直後に収容所が設置され、さらに「沖縄諮詢会」(戦後最初の中央政治機関)があった「沖縄の戦後復興の地」といわれた石川を想定して書かれた。そのため同地で開催された。

 竹内は「内地の文化に負けないダイナミックさを持つ」エイサーを、「沖縄の人のアイデンティティーの象徴」として用いたという。竹内は「沖縄県発足式典で屋良朝苗知事が、沖縄県の発足を宣言したときの苦渋の顔が忘れられない。今も在日米軍専用施設面積の7割が集中している現状に、火種が残っていると感じる。ウチナーの問題を内地の問題にしたい。沖縄と本土の間に垣根のない世界にしたい」と話した。

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 「沖縄の火種―」の東京紀伊國屋ホール公演の有料動画を15日まで配信している。2500円。(詳細はhttps://v2.kan-geki.com/live-streaming/ticket/684)。
 (藤村謙吾)