ペロシ米下院議長の台湾訪問はもっぱら米国国内の事情で、バイデン大統領も米軍が反対していることを示唆していた。だが中国側は、米国要人の相次ぐ訪台と一体と見て、不信感を高めるだろう。中国側の「米国が中国を挑発している」という説明に一定の正当性を与えてしまった。今回の訪台は、近年の緊張が高まる米中関係を、さらに危険水域まで悪化させる恐れがある。
中国の対抗措置はまだ明らかではないが、少なくとも軍事演習などを拡大させることが想定される。米軍もこれに対抗して緊張が高まれば、偶発的な衝突が起こる危険性が増す。
沖縄では最近、中国をにらんだ米軍の活動に影響を受けてきた。中国軍の空母が台湾周辺で演習するのに対し、米軍も東シナ海で空母の訓練をして艦載機が沖縄に飛来したり、F22やF35といった最新鋭の第5世代戦闘機が米国から飛来したりしている。
緊張が高まれば、こうした米軍の外来機飛来がますます増えることが予想される。平時から県民の負担は重くなる。有事となれば沖縄は真っ先に狙われる危険性がある。
衝突を避けるためには対話や信頼醸成が不可欠だ。しかし米中間の不信感は深く、緊張緩和に向けた見通しは当面厳しい。
(国際政治学)