世界初、イカ養殖 OISTチーム成功、資源減少の中、活用に光


社会
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アオリイカ(中島隆太博士提供)

 沖縄科学技術大学院大学(OIST)は2日、ジョナサン・ミラー教授率いる物理生物学ユニットのチームが、ツツイカの一種であるアオリイカ=写真・中島隆太客員研究員提供=の養殖システムを世界で初めて開発したと発表した。食用イカの養殖は技術的に困難とされてきたが、誕生から繁殖に至るライフサイクルが完結するまで飼育することに成功した。持続可能な食材利用として商業化に向けた大きな一歩となりそうだ。

 同技術の特許を申請中で、今後OIST技術開発イノベーションセンターと連携し、事業化を目指すという。

 研究者によると、スルメイカをはじめ日本の海に生息するイカ類は1980年代以降、個体数が減少傾向にあり、現在は全盛期の1割にまで落ち込んでいる。日本では南米産の輸入加工品に頼っているのが現状だ。

 過去60年にわたり世界で養殖に向けた取り組みが行われてきたが、攻撃的な性格や、流れに敏感なデリケートな習性などが原因で成功例はなかったという。

 今回OISTは、県内に3種が生息しているアオリイカに特化した養殖技術を、ハードとソフトの両面で開発した。水槽内で卵からふ化させて育て、交尾と産卵、また卵をふ化させるという一連のライフサイクルを10世代にわたり成功させた。

 イカの成長段階に合わせて水質や餌やりの管理技術などを確立したほか、ソフト面では一連の管理をソフトウェアで行うデジタルシステムを構築した。水槽の小型化や生存率の向上、餌コスト低減なども達成した。

 ミラー教授は「今回の研究成果は、ツツイカを何世代にもわたって持続的に養殖できるようになる画期的な一歩となった」とコメントした。OIST技術移転スペシャリストのグラハム・ガーナー氏は「この技術を企業に紹介し、ライセンス供与につなげたい」と意気込んだ。
 (当銘千絵)