「ここまで来られて感謝」エースのけが、コロナ、長雨…試練を経たナインに悲壮感なく 興南、夏の甲子園で初戦敗退


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 全国高校野球選手権大会第3日は8日、甲子園球場で1回戦が行われ、沖縄代表の興南は市船橋(千葉)に九回に押し出し死球でサヨナラ負けした。興南は春夏通算で千葉勢に3戦3敗となった。市船橋(千葉)のほか、海星(長崎)、天理(奈良)、敦賀気比(福井)が2回戦に進んだ。敦賀気比は高岡商(富山)に13―3で大勝。一回に打者10人の猛攻で4点を先行し、追い上げられた中盤以降に突き放した。3投手の継投で反撃をかわした。

十分に戦ってくれた

 興南の我喜屋優監督の話 早いうちに5点が取れて理想の展開だったが、相手の左腕投手を打ちあぐねて逆転を許した。選手は一体となってベストを尽くして頑張ってくれた。甲子園は成長させてくれる場所なので、将来の学びに生かしてほしい。本土復帰50年や学校創立60年の節目に何かを残したい気持ちは強かった。選手はプレッシャーを感じながらも十分に戦ってくれた。

禰覇「ここまで来られ感謝」

興南―市船橋 3回1死一、二塁、先制の適時二塁打を放ちガッツポーズする興南の禰覇盛太郎=8日、兵庫県の阪神甲子園球場(大城直也撮影)

 いくつもの苦難を乗り越えてきた興南ナイン。甲子園初戦は5点を先行しながらもじわじわ追い上げられ、サヨナラ負けを喫した。「負けて悔しいが、ここまで来られたことに感謝したい」。4打数3安打でチームをけん引した禰覇盛太郎主将が真っ先に口にしたのは、謝意の言葉だった。

 三回に禰覇、盛島稜大、安座間竜玖ら中軸が連続適時打を放つなどして一挙5得点。主導権は興南が握ったかのように見えたが、市船橋2番手の左腕エース森本哲星に抑え込まれた。低めスライダーを打ち損じるなどして凡打が重なり、相手にリズムを奪われた。徐々に追い上げられ、サヨナラ負けを喫した。

 昨年秋の九州大会はエース生盛亜勇太がけがで離脱し、春の選抜出場の参考となる4強入りを逃した。禰覇は涙を流して「甲子園に連れて行けなくてごめん」と生盛に謝った。

 悔しさをバネに、冬は増量や個々のトレーニングを積んでパワーアップ。春の県大会に挑もうとした矢先、新型コロナ陽性者が相次ぎ、泣く泣く出場を辞退。夏の県大会前は長い梅雨で思うような練習ができず実戦も積めなかったが、復調した生盛が「自分が甲子園に連れて行く」とチームを引っ張った。

 体調管理に気を配り万全の態勢で臨むも、初戦で涙をのんだ。しかしナインに悲壮感はなかった。禰覇は「最高の舞台はあっという間だった。甲子園という特別な場所で力以上のものが出せた」とすがすがしかった。
 (金良孝矢)