マルチーズロックが多様性を「ポップに」歌う 新譜「人類観」


この記事を書いた人 アバター画像 琉球新報社

 沖縄を拠点に活動するロックバンド「マルチーズロック」がこのほど、4年ぶりのアルバム「人類観」を発売した。沖縄に根差しつつ、さまざまな音楽を取り込んだ無国籍、多国籍なロックは健在だ。今回はより普遍的でスケールの大きい世界観のアルバムに仕上がった。作詞作曲を担うリーダーのもりとは「アイデンティティーを主張するのではなく、アイデンティティーを分かち合いたいという気持ちからポップなアルバムになった」と振り返る。

新譜「人類観」をリリースしたマルチーズロックのもりと=8日、那覇市泉崎の琉球新報社(喜瀬守昭撮影)

 アルバムが発売されたのは沖縄の日本復帰から50年を迎えた今年5月15日。もりとは「復帰当時の問題はずっと変わらない。本当に復帰してるのかな」と首をかしげる。1曲目の「123」は基地問題や本土主導の開発などを風刺しており、「沖縄の人が沖縄を動かしてないよねっていう沖縄の人へのメッセージでもある」

 「同じ月」は2019年に膵臓(すいぞう)がんで亡くなったミュージシャン遠藤ミチロウらにささげる曲。もりとは闘病中の遠藤を励ますメールを送っていたが、亡くなる2日前、「もりと」と名前を呼ぶだけのメールが送られてきた。「苦しみながら返してくれた。そのメールはいまだに消せない」。「同じ月」では、遠藤の思いを継ごうと「俺の体に子宮をつくる/お前の子どもが生まれてゆく」と歌う。

 アルバムタイトルになっている「人類観」は、もりとが敬愛するバンド「ドアーズ」にも通ずるような壮大な曲だ。人類館事件に引っ掛け「どの花見てもきれいだな」と歌う。世界中で差別や分断、戦争が起きている中で鮮やかに響く。

マルチーズロックの新アルバム「人類観」

 21日午後5時からアルバム発売記念ライブが那覇市の桜坂劇場である。

 アルバムは税込み3千円。ライブのチケットは一般前売り2500円、当日3千円。問い合わせは同劇場(電話)098(860)9555。

(伊佐尚記)