復帰直後の沖縄〈50年前きょうの1面〉8月15日「問われる戦争責任と平和/きょう『終戦記念日』」―琉球新報アーカイブから―


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 1972年5月15日に沖縄が日本に復帰してから今年で50年。27年間のアメリカ施政権下から脱して「祖国」の日本に戻るカウントダウンが進む中、本土との格差是正、自衛隊配備や米軍基地の取り扱い、ドル―円の通貨切り替え問題、初の知事選など、大きな歴史のうねりに翻弄される島の住民は山積する課題に直面する、そんな時代だった。復帰した後の沖縄の発展を展望しつつも、さまざまな制度変更にさらされる行政と政治。琉球新報の紙面もその歴史の一日一日を刻んでいった。

 

 日本「復帰」した1972年8月15日の琉球新報1面トップは、「強制収用2次通知/那覇など3自治体へ/市有地が対象に/高松長官、施設局〝独走〟に注意」との見出しで、軍用地の土地の再契約を拒否している自治体への強制収用通知の見込みを掲載している。関連で「瀬長島は日米で使用/人民党、強制収用に強く抗議」と、瀬長島の使用について那覇防衛施設局長が米軍と自衛隊とで共同使用する方針を明らかにしたと伝えている。

 27回目の「終戦記念日」の15日の紙面として「問われる戦争責任と平和/きょう『終戦記念日』」との見出しをハラ位置に掲げている。

 沖縄海洋博の開催に伴う道路整備に関して「高速道は東ルートで/環境庁が方針/西海岸の保護強調」との見出しで紹介している。高速道路整備で環境庁が環境への影響を見当していた。記事では「環境庁は(中略)高速道路の西海岸ルート案は自然景観の破壊など問題があり、好ましくないとの方針をきめ、建設省に文書で連絡した」と記している。

 沖縄の本土復帰に伴い、政府が沖縄大学(那覇市)と国際大学(コザ市)の統合を進めていることについて「〝統合〟は自治侵害/沖大・国際大、差別的廃止処分で提訴」との見出しで、両大学が政府方針に反対して提訴したとの記事を掲載している。

 記事では「沖縄の本土復帰に伴い『大学設置基準に満たない』との理由で統合させられた沖縄の二つの私立大学が『大学の廃止処分などは法律で実施されるべきで、政令で実施した今度の統合は差別的廃止処分であり、〝統合〟をきめた政令は大学の自治を侵害し、憲法23条(学問の自由)に違反する』として、国、文部大臣などを相手に政令の一部取消などを求める訴えを東京地裁に提出した」と報じている。「両大学は沖縄を代表する私大だが、教授陣などが手薄なため文部省の大学設置基準に及ばなかった。そこで政府は両大学を統合『沖縄国際大学』として発足させることにし、ことし2月設立を認可、4、5月には文部省関係の政令の一部を改正した」のが発端。

 これに反発した両大学に対し「政府はやむを得ず5月の次官会議で『沖縄国際大学はそのまま発足させ、沖縄大学は向こう4年間存続させる』と決めたが、両大学と新しい沖縄国際大学との間の了解はつかないままだった」と現状を紹介している。

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 5月15日で復帰を迎えたが、沖縄を取り巻く状況は復帰して変わったこともあれば、変わっていないこともあった。琉球新報デジタルは、復帰を迎えた沖縄のその後の姿を琉球新報の紙面でどう記したか、引き続きお届けしていきます。