基地や戦争、知事選まで…ドタバタ劇で沖縄を考える機会に 人情喜劇「民宿チャーチの熱い夜20」


社会
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民宿「チャーチ」に訪れた新聞記者から復帰50年連載企画で取材を受ける金城臣吾(川田広樹・左から4人目)、渡具知竜太郎(渡辺熱・右端)ら=5日、沖縄市民小劇場あしびなー

 東京の劇団・デッドストックユニオン(渡辺熱主宰)が沖縄の民宿を舞台に描く人情喜劇「民宿チャーチの熱い夜20」(渡辺作・演出)の沖縄公演が5、6日の両日、沖縄市民小劇場あしびなーで開催された。復帰50年、沖縄戦などをテーマに「命どぅ宝」のメッセージを伝えた。出演者らの沖縄に対する熱い思いを詰めた温かい舞台に、拍手が送られた。5日の舞台を取材した。

 物語は、南の島にある教会を改装した民宿「チャーチ」に訪れる宿泊客と、宿を切り盛りする地元の人間模様や交流を描くコメディー。今回がシリーズ20作目。民宿「チャーチ」で働く宮里美樹(三崎千香)、料理人の金城臣吾(川田広樹)、オーナーで渡具知興業社長の渡具知竜太郎(渡辺)、民宿「金城」の娘金城紀子(岩上円香)らを軸に物語が進む。

 今回は民宿「チャーチ」に東京から新聞記者らが訪れる。竜太郎はコロナ禍で落ち込んだ沖縄の観光をもり立てようと、ひそかに県知事選への立候補を企てる。対して金城が応戦しようとドタバタ劇を繰り広げる。人情喜劇でありながら、沖縄戦や復帰50年のほかにも、在沖米軍基地やコロナ禍の沖縄など、沖縄が抱える諸問題を織り込み、観劇を機に沖縄を考える機会を提供する。

 川田や、民宿「チャーチ」の娘役のあだにや結、年齢不詳のユタ役のシーサー玉城、宮川たま子ら県出身芸人やタレントも舞台を盛り上げた。

 上演後、観客に向けてあいさつした渡辺主宰は「昨年、戦争を体験された方に会い話を伺った。自分が思っていた以上の衝撃と何とも口では表せないような思いになり作品を作った」と振り返った。

 「民宿チャーチの熱い夜」は1998年初演。同劇団の代表作として東京で20年以上、上演してきた人気作だ。渡辺主宰は「これからも沖縄の心というものを東京や沖縄で上演したい」と意気込みを語った。沖縄公演は昨年7月に続き、3度目の開催となった。
 (田中芳)