「学校に戻る」を目標に 沖縄初の不登校支援専門児童デイサービス 家庭、学校、福祉つなぐ


社会
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 2020年度、沖縄県内の不登校の児童生徒数は小中高合わせて4495人。その数は年々増加傾向にあるものの「学校に行けない・行かない」という悩みを抱える子どもの受け皿は少なく、家庭で抱え込む事例も少なくない。那覇市首里儀保町の「バースデイ」は、県内初の不登校支援を専門とするフリースクール型放課後等デイサービスとして21年6月に開所した。代表の中村智治さんは「不登校は誰でもなり得るもの。若い頃のつまずきに手を差し伸べたい」と力を込める。

不登校児童生徒を対象とした児童デイサービス・バースデイで学ぶ中学生たち=7月、那覇市首里儀保町

 バースデイは、不登校の児童生徒の居場所をつくり、家庭と学校、福祉をつなぎ「学校に戻る」支援をする。もともと算数教室を経営している中村さんは、受講生の中にも学校に行けていない子どもがいること、コロナ禍でその数が増えていることに心を痛めていた。彼らの居場所をつくろうと立ち上げた。

 午前10時半~午後2時半に開所し、現在在籍数は20人。在住市町村で障害福祉サービス受給者証を取得した小中学生を対象に、学習支援に重点を置き、学校と家庭と福祉をつなぐ。

 「不登校に陥っている子どもの多くはメンタルに不調を抱えている。日常生活に支障を来しているならば、医師の診断を受け受給者証を取得することは可能だ」と話す。

 通所できない児童生徒への訪問指導や、学校への定期報告、スクールソーシャルワーカーとの情報共有などにも取り組む。中学校では不登校で「オール1」となると高校受験で不利になることから、学力も重視する。「学校の勉強についていけないと学校に戻りづらい。学力は大切だ」と中村さん。

 県外からの転校をきっかけに小4から学校に通えていない中2の男子(13)は、昨年9月からバースデイに通う。当初は家からも出られなかったが、今は施設で学校の課題もこなす。課題は定期的に学校に提出し評価にもつながっている。「同世代の同じ境遇の人ばかりだから過ごしやすい。いつかは学校に戻りたい」と笑顔で話す。

 昨年6月の一斉休校を機に不登校となった小3男児の母親は、バースデイに通所するために受給者証を得た。「子どもは学校に行けない自分を責め、親子でどうしたらいいか分からなかった」と振り返る。

 現在、バースデイの担当者が定期的に施設での頑張りを学校に報告し、担任もタブレットで男児の様子を確認する。昨年度は全く学校に行けなかったが、本年度の夏休み前には週に何度か図書館へ登校できるようになったという。「不登校を家庭だけで抱えるのは大変だ。一歩踏み出して、専門家に相談したほうがいい」と実感を込めて語った。

 中村さんは「不登校の子どもたちの多くは学校に戻りたがっている。学校がつらくなったら、またここに戻ってきたらいい。スローステップで登校できるようになってほしい」と力を込めた。

 バースデイへの問い合わせは(電話)070(8908)4101。

(熊谷樹)