超高齢社会で年々死者数が増える中、今夏は新型コロナウイルスに感染後に亡くなる人が急増し、南部広域事務組合が運営するいなんせ斎苑(浦添市)と南斎場(豊見城市)の稼働が逼迫(ひっぱく)している。南斎場は火葬までの待機日数が2週間以上となったため、従来コロナ関連の火葬は午後3時以降に行っていたが、19日は特別に稼働時間を午後0時半に繰り上げ、9遺体に対応した。ただ、火葬炉の耐久性や人員に限りがあるため、濱里和宣所長は「依頼件数はピークだが、これ以上の受け入れは限界。今は待っていただくしかない」と窮状を訴えた。
南斎場で受けるコロナ関連遺体は2021年度は109件だったが22年度(4月~8月19日)はすでに101件に上る。市民や業者から火葬枠の拡大を求める声が寄せられるが、炉は冷却時間が必要で24時間フル稼働はできない。南斎場では、火葬炉6基で1日最多14件を受け入れるが、すでにメーカー推奨の1カ月稼働数500回を超える800回で運用中だ。これ以上の稼働数増は炉の耐久性を著しく削ることになる。
設備だけでなく職員や感染対策にも限りがある。行政側は、ひつぎに納められた遺体からの感染リスクは低いとしている。だが、一般の目に触れない火葬炉の裏では、専門職員が炉内から吹き出る熱風を受けながら、遺体や副葬品が燃え切るよう管理している。防護服とマスクの着用が必要で、40度以上の暑さの中で遺体と向き合い続けている。
濱里所長は「葬儀業者の事情も分かるが、公益性の高い火葬業務を止めないためには設備を守り、クラスター(感染者集団)も避けないといけない。今は県全域の火葬場で対応するのが理想で、長期的には公営火葬場を増やす必要がある」と語った。
いなんせ斎苑や南斎場の稼働逼迫を受け、県衛生薬務課によると、遺族から火葬許可証を受け付ける南部の各市町村に対して、南部以外の火葬場も案内するよう通知したという。 (嘉陽拓也)