【うるま】沖縄戦を描いた小説「ひめゆりの塔」原作者などで知られる、那覇市首里出身の故・石野径一郎さんが所蔵していた写真約200点が見つかった。立命館大文学部で都市形成の歴史や地理を研究する加藤政洋教授らが古書店で入手した。写真には、戦後のコザ(現沖縄市)の収容所や石野さんの故郷である首里や那覇の風景、米軍による伊佐浜の強制土地接収や軍用地料の一括払いなどを打ち出した「プライス勧告」への反対運動などが収められている。
写真を見つけたのは加藤教授、河角直美准教授、前田一馬特任助教のグループ。加藤さんらは戦後のコザの都市形成について研究を続けてきたため、沖縄市に写真を寄贈した。写真は本島中北部や那覇、首里、糸満の戦跡など広い範囲を収めており、沖縄市の市史編集担当は今後、関係自治体とも協力して資料の分析を進める考え。
16日には市中央の戦後文化資料展示館ヒストリートで加藤さんらが写真を解説する催しがあった。石野さんは沖縄戦で廃虚と化した母校の県立一中などの写真を所蔵していたことから、加藤さんは「故郷を歩き、残ったものを撮影しているのが分かる」と紹介した。
加藤さんはまた、石野さんが伊佐浜の強制土地接収やプライス勧告への反対集会などの写真も多く所蔵していたことも説明し、米統治下の沖縄の人々の暮らしに対する石野さんの関心の高さをうかがわせることを指摘した。
(島袋良太)