【記者解説】埋めて強行する国の手法、司法に実体審理迫る 辺野古周辺住民が国を提訴


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 名護市辺野古の新基地建設を巡り、地元住民らが新たな訴訟を提起したのは、埋め立てを強行する国の手法が適法かどうか、司法に実体審理を迫る狙いがある。辺野古に関する県と国の訴訟では、裁判所が中身に踏み込まず、県が裁判で争うルートが閉ざされつつある。新基地の影響を直接的に受ける住民が原告となって入り口を突破し、実質的な司法判断の引き出しを目指す。

 新基地を完成させるためには、国は設計変更申請に対する県の承認を得なければならない。原告が県でも住民でも、司法が違法性を認めて国交相裁決を取り消し、不承認の効力が発揮されれば、工事に影響を与える。

 2019年に提訴された、辺野古の埋め立て承認撤回取り消しに関する住民の訴訟では、執行停止に関する決定で一部の原告適格が認められ、一時は実体審理に入っていた。しかし途中で裁判体の構成が変わり、ことし4月の一審那覇地裁判決は一転して原告適格を認めず、住民の訴えを却下した。

 23日に提起した住民の訴訟では大浦湾でエコツーリズムを行い生計を立てる人や、自宅が航空機の飛行に関する高さ制限にかかる人らが原告に加わった。新基地建設が本当に実現するのか、完成後の影響がどうなるのか、不安や疑問の声は根強い。司法は入り口で退けることなく、埋め立ての可否を正面から判断すべきだ。

(前森智香子)