ファッション業界に広がる新素材 「汚染産業」脱却へ環境負荷の少ない生地の開発進む 大宜味ではパイナップル葉繊維


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パイナップル葉繊維入りの生地を使ったアロハシャツ。デザインは「PAIKAJI」(フードリボン提供)

 自然環境で分解され、廃棄時に地球に負荷をかけない「生分解」の可能な生地の開発が加速している。その背景にあるのが、国連貿易開発会議(UNCTAD)が「ファッション業界は世界で第2位の汚染産業」と指摘するほど、服作りが環境に与える負荷の大きさだ。

 スポーツ用品大手「ゴールドウイン」は今秋、バイオベンチャー企業「スパイバー」(山形県鶴岡市)が開発した人工タンパク質繊維「ブリュードプロテイン(BP)」を使ったジャケットやデニム、フリースなど約20アイテムを発売する。

 BPは、関山和秀代表がクモの糸などから着想。植物由来の糖類を食べた微生物から分離したタンパク質で作る。カシミヤやウール、毛皮、皮革、絹といった動物性繊維の代替として多様な形に変化させることが可能な上、製造過程で温室効果ガスの排出量を大幅に削減。世界が注目する生分解できる循環型素材だ。

 素材メーカー「フードリボン」(沖縄県大宜味村、宇田悦子社長)が生んだのは食用パイナップルの葉を利用した「パイナップル葉繊維」だ。大半が廃棄される収穫後の葉に着目。取り出した繊維は細くつややかで、吸放湿性が高いのが特徴という。同社繊維事業統括マネージャー長谷場咲可さんは「これらの繊維は最終的に土に返る」と胸を張る。オーガニックコットンと混紡して生地にし、アパレルブランドと協業。シャツやデニムなどの形で販売する。

スパイバー社の人工タンパク質繊維「ブリュードプロテイン」を使ったデニム(左)とジャケット。価格は「各15万円程度の見通し」

 世界のアパレル業界が地球環境に与える影響は甚大だ。環境省によると、繊維生産は年間、500万人の生活に必要とされる約930億立方メートルの水を使う。工業用水汚染の20%が繊維の染色と処理によると推計される。

 一方、国内で2020年に供給された衣類は約82万トン。手放された衣類はほぼ同量の約79万トンで、その3分の2が廃棄された。

 衣類の廃棄は世界中で問題だ。フランスでは今年から、衣服などを製造販売する企業による在庫商品の廃棄(埋め立て・焼却)を原則禁止する法律が施行された。

 東京造形大名誉教授でテキスタイルデザイナーの須藤玲子さんは「廃棄する衣類をいかに減らすか。そして環境負荷が少ない廃棄を可能にするテキスタイルの開発は、喫緊の課題」と話す。

 新素材の課題は現段階では高額なことだが、ゴールドウインの渡辺貴生社長は「量産化が進めば価格は下げられる。いかに世の中を良くする商品かという視点で、消費者が物を選ぶ時代になっていく」とみる。ファッションジャーナリストで日本エシカル推進協議会副会長の生駒芳子さんは「サステナブルファッションへの消費者の関心は、今後も高まるだろう」と指摘している。
(共同通信)