制服の行方 佐野真慈(宮古支局)


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written by 佐野真慈(宮古支局)

 「制服の第二ボタンください」。卒業式で意中の男子にお願いし、手に入れた方も多いだろう。第二ボタン以外も全てもらわれて、ボタンなしの学生服をこれ見よがしに肩に掛け、花束抱えて帰路につく。モテ男にあこがれた人もいるだろう。私もその一人だが、中高と男子校出身のためか、魅力がないためか私の学生服はボタンが固く固く縫い付けられたままだった。

 制服にはそんな甘酸っぱい情景や思春期の思い出が詰まっている。捨てられずにいる人も多いという。タンスの肥やしにするぐらいなら誰かに大切に使ってもらうのもいいのではないだろうか。

 宮古ガスが制服リユース事業に取り組んでいる。いらなくなった制服を買い取って補修・クリーニング後に必要な保護者に数千円で販売する。子どもの貧困率が全国平均の2倍に上る県内の状況を知った社長の「何か支援したい」との思いが始まりだ。

 制服は一式そろえると数万円かかる。困窮世帯にとってその負担は重い。「島の子の学びを大人みんなで支える」。そんな考えが島中に広がればいいなと願う。いつか、第二ボタンを求められても「制服を待ってる子がいるから」と言えるのが、新たなモテ男の象徴になるやもしれない。

(宮古島市、多良間村担当)


ゆんたくあっちゃー 県内各地を駆け回る地方記者。取材を通して日々感じることや裏話などを紹介する。