まいた種、収穫今こそ 佐喜真淳氏<駆ける・沖縄県知事選2022>中


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支持者の下へ駆ける佐喜真淳氏=8月25日、県民広場

 2018年10月1日朝。前日投開票の知事選で敗北を喫した佐喜真淳氏(58)は、31万票を超える支持を与えてくれた県民への感謝を胸に街頭に立っていた。この日から今回の知事選に向けた闘いが始まった。選挙戦の幕が開けた今年8月25日の出陣式。毎日のように街頭に連れ添った「感謝」と書かれたのぼり旗は、すっかりくたびれた姿を見せながら、4年前の雪辱を誓う佐喜真氏を傍らで見守っていた。

 この4年間、豚熱や首里城火災、新型コロナウイルスなど幾多の災難が沖縄を襲った。県内各地で苦難にあえぐ県民の声を聞き続けた佐喜真氏。「政治のリーダーシップが必要だ」。再挑戦への決意を強めていった。

 今回の知事選では2030年までの米軍普天間飛行場返還と跡地利用の促進を公約に掲げ「私の政治の原点として政府に訴えていく」と強い思い入れをみせた。

 原点は宜野湾市長時代にさかのぼる。普天間飛行場から派生する基地被害に接し続け、早期の危険性除去の必要性は身に染みていた。

 一方で市長時代に普天間飛行場の一部を返還させて事業化した市道11号の開通は、市内の道路の渋滞緩和につながった。返還が実現した西普天間住宅地区跡地では琉球大医学部・琉球大学病院の移転を中心とする「沖縄健康医療拠点」の整備が進む。

 市長時代にまいた種は着実に成長した。返還跡地活用での明るい未来の街の姿が思い浮かんだ。

 「決めたことはやる。自分にストイックな面がある」(長女・妃華氏)という姿勢を映し出すように、街頭に立ち続ける佐喜真氏の顔はすっかり日焼けしている。その顔立ちは空手家らしく精悍(せいかん)さを際立たせる。反面、近寄りがたい印象を持たれがちだ。妃華氏も「不器用ではある」と笑いながら「家族で旅行に行けば誰よりもはしゃぎ、カラオケに行けば若い世代の選曲でも盛り上がれる」と語る。愚直に沖縄を駆け回る佐喜真氏の意外な一面が垣間見えた。

 「故郷沖縄、県民のために、もう一度頑張りたい」。佐喜真氏は出陣式で声を振り絞り、支持を訴えた。積み上げてきた日々を胸に、4年分の思いを懸ける。
(’22知事選取材班・知念征尚)


 11日投開票の県知事選は残り2週間を切った。支持拡大に向けて駆け回る下地幹郎氏(61)、佐喜真淳氏(58)、玉城デニー氏(62)の3候補の人柄や選挙運動の様子を担当記者が描く。