琉球新報は統一地方選の29市町村議選の立候補予定者に対し、アンケートを実施した。女性議員が極端に少ない現状を改善する方策や、性的少数者のカップルを公的に婚姻関係相当と認めるパートナーシップ制度の賛否、現行の議員報酬について問い、8月25日までに500人から回答を得た。男性が大多数を占める議会構成の改善策には「議員活動と育児などの両立」が過半数に上った。パートナーシップ制度には過半数が「賛成」したものの、制度になじみのない回答者も多く、「無回答」は4割近くだった。議員報酬については「足りない」が3割以上で、「十分だ」を若干上回った。(’22統一地方選取材班)
<女性の政治参画推進>「クオータ制」20%にとどまる 「育児との両立支援」55%
8月時点の本紙調べで、県内市町村議会の定数に占める女性議員の割合は約1割にとどまった。議員が男性に偏り、女性議員が極端に少ない現状を改善するための方策を聞いたところ立候補予定者の55.2%(276人)が「議員活動と育児などの両立支援」を挙げ、最多となった。一方、抜本的改善に向け議席や政党内で立候補者数の一定数を女性に割り当てる「クオータ制の導入」については、20.6%(103人)にとどまった。現状を課題として捉えず、制度導入に消極的な姿勢がうかがえる。
統一地方選の立候補予定者の9割近くは男性が占める。クオータ制に対しては男性を中心に、「女性を優遇するのは男女平等の観点からおかしい」という意見が寄せられた。
琉球大学教授で、同大のジェンダー協働推進室長も務める喜納育江氏は「男性は自分がどんなに高いげたを履かせてもらっているか気付いていない」と指摘した。
2021年の本紙企画「『女性力』の現実」では女性の政界進出を阻む数々の障壁について取り上げた。「家事育児は女性の仕事」「女性は男性よりも一歩下がるべき」といった性別役割分業や男尊女卑に基づく固定概念が根底となって家族から理解が得られないことや、供託金や選挙カーなど高額な選挙資金も女性候補者が出馬を断念せざるを得ない要因となっていた。
「男性が変わらないと、女性を取り巻く問題も変わらない」―。喜納教授は、ジェンダー問題を解決するには女性が自分たちの置かれている状況に疑問を持ち、学ぶ機会も重要だが、男性もそこに加わることが必要だと指摘する。
一方、アンケートで「ジェンダーバイアスをなくすための教育」を選択した人は10.8%(54人)にとどまった。喜納教授は「なぜ意識改革が必要か分かっていない。事態は深刻だ」と警鐘を鳴らす。アンケート結果で「議員活動と育児などの両立」が最も選ばれたことも、「育児さえ支援すれば議員活動できると思っており、よもや自分が育児を担うとは思っていない」と分析した。アンケートでは選択肢として多く選ばれた順に、「女性が政治を学ぶ研修」(32.0%、160人)、「男性の理解、支援(29.4%、147人)」、「女性の理解、支援(24.8%、124人)」、「お金がかからない選挙運動」(21.8%、109人)と続いた。
<パートナーシップ>賛成は54%、無回答37% 制度への理解進まず
パートナーシップ制度については54.0%(270人)が賛成したものの、37.2%(186人)は無回答だった。反対は5.6%(28人)で、その他は3.2%(16人)だった。無回答やその他を選択した立候補予定者の中には制度そのものを理解していない人が多かった。
パートナーシップ制度はLGBTなど性的少数者のカップルを公的に婚姻関係に相当すると認め、法の下に結婚した夫婦と同様に行政サービスや制度の利用を可能にする。県内では那覇市と浦添市が同制度を導入している。同性カップルの婚姻を法律で認める同性婚とは異なる。
アンケートでは賛成の立場から、「現状において苦しんでいる人の権利を認めるべき」「誰もが自分らしく尊厳を持って生きられる社会に進んでいく施策は必要」「人に優しい社会作りを考えると必要」といった意見が上がった。
「行政だけでなく市民も含めて家族の形態の多様性に対して寛容な社会になってほしい」と願う声もあった。
一方、反対の立場からは「少子高齢化の歯止めが利かなくなる」「自然の理に反する」などの意見が上がった。また性の多様性は認めつつ、制度化については慎重な議論が必要とする声も目立った。
都市部では制度に対する理解が広まっているものの、地方では制度そのものになじみがないことから普及活動が必要との指摘もあった。
<議員報酬>「足りない」最多35% 「十分」30%、市町村で金額差
現行の議員報酬が十分かどうかを尋ねる質問には、「足りない」が35.6%(178人)と「十分だ」の30.2%(151人)を5.4ポイント上回った。「その他」は22.8%(114人)だった。市に比べて報酬が少ない町村の立候補予定者から「足りない」との回答が目立った。
41市町村議会議員の議員報酬は、11市の平均が月額40万9636円。人口2万人以上の町村(6町村)が23万7500円、1万人以上2万人未満(6町村)が23万9700円、5千人以上1万人未満(3町村)が20万5666円、2千人以上5千人未満(4町村)が21万5200円、2千人未満(11町村)が18万4300円となっている。また、報酬とは別に一般の賞与に当たる期末手当もある。
「足りない」と回答した立候補予定者にその理由を選択肢の中から選んでもらったところ、最も多かったのが「扶養家族が複数いて生活できるほどの報酬ではないから」(29.9%)で、次いで「居住する市町村の職員や民間企業より給与水準が低いから」(23.9%)だった。
自由記述では、「優秀な人材が参入できない」(50代新人)や「若者が立候補しやすい環境づくりのためには増額を望む」(60代現職)など、若者の政治参画を促す観点から増額を求める意見が複数あった。
賛否を示さずに「議会で議論すべきだ」との意見も複数あったほか、新人では「議員になってみないと分からない」などの回答が目立った。