経済振興に必要なのは?高度なIT人材発掘と育成を 真嘉比愛氏(ちゅらデータ社長)<識者の視点・沖縄県知事選22>②


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真嘉比 愛氏

 ―県内のIT産業の現状と課題は。

 「若いIT企業家が多く盛り上がりを見せてきている。私が起業を志したのは10年以上前になるが、その当時は県外から仕事を受けるにしても二次、三次どころか四次請け、五次請けもあった。都市圏と競争できる環境ではなかった状態から少しずつ良くなっている」

 「県内には下請けで作業できる人はいても、元請けとしてリーダーシップを取ってプロジェクトを進められる高度なIT人材がまだ不足している。鶏が先か卵が先かだが、高給を稼げるだけの人材がいないと高単価な仕事は受注できないので、高い報酬ももらえない。企業の稼ぐ力が弱いので低所得はなかなか改善しない循環にある」

 ―沖縄におけるIT産業の可能性は。

 「島しょ県の沖縄は、産業面では地理的な不利性で苦しんできたが、ITに場所は関係はない。東京でしかできないと思われていた最先端ビジネスを地方でも実現できる。さらにコロナ以前はIT経済圏と物理的に離れてると、単純な印象論で高単価案件の受注は難しい状況もあったが、リモートワークが定着したコロナ以後、顧客は発注先を場所で選ばなくなった。追い風だが、沖縄はまだ乗り切れていない」

 ―各候補者の政策をどう感じるか。

 「高度なIT、DX人材を育てようとする視点は良いが、各候補とも具体性がない。この業界のビジネスは変化が早いので、特に人材獲得は2、3カ月待ってたら負ける。もう少し踏み込んでほしかった」

 ―各候補に訴えたいことは。

 「沖縄の経済や雇用環境を変えるには、稼げる産業を生み出さないといけないが、高度な技術を持った人材をゼロから育てるのはほぼ不可能だ。私たちのビジネスは今もずっと走っているし、すごい速度で進化している。教育も大事だがこれだけでは追いつけない」

 「テレワークの定着で首都圏の近隣自治体はIT人材獲得に向け、移住に関する施策を積極的に打ち出している。沖縄でも外から高度人材を呼び込むと同時に県内人材も育てる両軸の施策が求められる。県知事は高度な技術を持った人材が沖縄を選択したくなるビジョンや価値をトップダウンで大胆に示してほしい」