新型コロナウイルス禍以前には沖縄を訪れる観光客数が90万人を超え、沖縄へのインバウンド(訪日外国人観光客)の3割以上を占めていた台湾。しかし、2020年3月に那覇空港の国際線が全便運休となって以降、台湾からの観光客はゼロの状態が続いている。日本政府は7日から水際対策を緩和し、1日当たりの入国者数上限の引き上げや添乗員を伴わないパッケージツアーでの入国などを認める。一方、台湾からの観光入客再開には、水際対策のさらなる緩和や旅行保険などが課題となっている。
今回の緩和では、航空券や宿泊施設を自分で手配する個人旅行の解禁には至らなかったが、添乗員を伴わないパッケージツアーでの入国が認められることで、旅行中の行動の自由度が増すと考えられる。コロナ以前は、空路で沖縄に訪れる台湾からの観光客の約8割が個人旅行だったことから、台湾の沖縄観光への需要回復につながることも期待される。
一方でビザや隔離措置は大きな課題だ。日本はコロナ禍以前、台湾や韓国など68の国・地域に対してビザ免除措置を実施していたが、水際対策のために停止している。県産業振興公社台北事務所によると、台湾国内では日本へのビジネス目的のビザは発行までに2カ月程度かかる。沖縄観光コンベンションビューロー(OCVB)の下地芳郎会長は「日本政府は台湾からの新たな観光ビザの申請をストップしている。観光交流としては道半ばだ」とビザ免除措置の重要性を訴えた。
現在、台湾からの観光客は帰国した際に3日間の隔離と4日間の自主防疫が求められている。台湾政府は感染状況を見ながら10月以降水際対策を段階的に緩和するとしており、帰国時のPCR検査が陰性だった場合は7日間の自主防疫のみとすることを検討している。
台北駐日経済文化代表処那覇分処の王瑞豊処長は、「保険の問題も台湾の旅行需要を鈍化させている」と話す。台湾では2020年6月頃にコロナ感染者数がゼロの日が続いていたため、保険会社が保険加入を呼び掛けた。しかし、その後感染者数が増え、結果的に保険会社は集まった190億の保険金の3・6倍にあたる670億円を支払うことになった。各保険会社が新規契約を停止し、旅行客は旅行保険に加入できない状態が続いていた。安達〓險社が海外旅行保険を9月1日からオンライン販売し、注目されている。
台湾で開催された観光サミットに出席したOCVBの下地会長は「台湾と沖縄は地理的、歴史にも昔から深い関係にあるのはもちろん、留学生や移民なども多い。観光だけでなく幅広く効果があるので、官民一体となって取り組む必要がある」と話した。 (與那覇智早)