足切断の恐れのある疾患、他人の幹細胞を用いて再生医療 琉球大が国内初の治験開始


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治験について説明する(左から)清水雄介教授と古川浩二郎教授、仲栄真盛保診療講師、植田真一郎教授=9日、西原町の琉大

 琉球大学は9日、動脈硬化症や糖尿病などで血流が悪くなって足が壊死(えし)し、足を切断したり命を落としたりする可能性がある疾患「包括的高度慢性下肢虚血」に対し、他人の脂肪を基に培養した幹細胞を用いた薬による再生医療の治験を日本で初めて開始すると発表した。県内で再生医療の治験を実施するのも初。

 治験は従来の治療では治らない重症患者を対象に実施する。今後約2年をかけて6例の患者を選び、ロート製薬(大阪府)が製造している薬を投与する。今回の治験で薬の安全性が確認されれば、対象を拡大して再び治験を実施する予定。有効性が推定される結果が出ると「条件付き早期承認制度」を利用し再生医療等製品として条件付き承認を目指す。早ければ約6年後の承認を見込んでいる。

 同疾患は食生活の欧米化や高齢化などで世界的に患者が増えている。従来は足の血管を広げる治療や人工血管を移植する手術が行われるが症状が悪化しやすく治癒に至らないことが多い。琉球大によると、国内では年間1万人以上が疾患の悪化で足を切断しており、切断後の5年生存率は25%以下とがんよりも悪いことから、新しい治療法が望まれている。

 今回の治験の責任医師は第二外科の古川浩二郎教授が務め、実際の治療は同科の仲栄真盛保診療講師が当たる。事務局責任者は臨床研究教育管理センターの植田真一郎教授が担う。事務局では県内の患者数や治療状況について情報収集をし、患者のレジストリ(症例登録)構築も目指す。

 2017年から県内で再生医療の治験を実施するための体制構築を目指し、ロート製薬と準備を進めてきた形成外科の清水雄介教授は「県内の患者を助け、日本の医療の発展につながる体制を今後もつくっていきたい」と語った。(嶋岡すみれ)