【識者談話】知事選結果は「民主主義取り戻す試金石」 白鳥浩・法政大大学院教授


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白鳥 浩(法政大大学院教授)

 今回の県知事選は従来の基地問題や経済振興のみならず、国政の争点の是非も問われるものとなった。岸田政権が抱える旧統一教会や国葬、防衛費増額を巡る安全保障の問題だ。

 知事選の選挙戦終盤には国葬に関する国会の閉会中審査があり、旧統一教会と接点のある自民党議員の調査結果も公表された。

 安全保障については、台湾有事となれば沖縄がその最前線になる。

 玉城デニー氏の再選は、そうした政権の対応、日本政治の現状に疑問符を付ける形で民意が集約される結果になったのではないか。

 もう一つ、知事選は今後の国と地方の在り方を考える上でも重要な結節点になる。

 安倍晋三元首相の銃撃事件後、政治家の要人が選挙の応援に入る場合には厳重な警備体制が敷かれ、鉄の柵が設置されるようになった。これまで見たことのない光景だ。

 民主主義とのディスタンス(距離)は近い方がいい。沖縄で選挙戦を見て回ったが、玉城氏は街頭で有権者と気軽にグータッチを交わし、遠くなる国の政治に対して地方自治の身近さを感じさせた。

 来春には全国の統一地方選がある。今回の知事選は、玉城氏がただ勝利したという意味にとどまらない。県政や地方自治を通して民主主義を取り戻し、それを国政に還元する意味でも試金石となった。
 (政治学)