子牛価格5カ月連続下落 6%減56万円、農家経営圧迫


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子牛に自給の粗飼料を与える山城義光さん=14日、糸満市南波平

 肉用の和牛子牛価格の下落が止まらない。8月に県内の家畜市場で取引された子牛の1頭平均価格は前月比6%減の56万2575円と、5カ月連続で前月を下回った。60万円を割るのは、新型コロナウイルス禍による枝肉価格急落の影響を受けた2020年10月以来となる。ロシアのウクライナ侵攻などに伴う飼料価格の高騰や円安により、子牛の買い手となる肥育農家が子牛の競り値を低く抑える傾向が強まっており、生産者の経営が圧迫されるなど状況は深刻化している。

 JA全農によると、8月の全国平均価格は前月比2%減の1頭62万9425円で、子牛価格の下落傾向は全国的なものとなっている。

 JAおきなわの関係者は、価格低調の背景に「肥育農家の資金繰りの悪化」があると指摘する。生産コストの3~4割を占める飼料費が過去最大の値上げ幅を記録する一方、収入源となる枝肉の相場は軟調に推移しているため、肥育農家の購入意欲が低下したり、農場規模を縮小したりする動きが顕著になっているという。

 関係者は「県産子牛の買い手は9割が県外の肥育農家。県内だけで問題解決するのは難しく、新型コロナや円安など社会情勢が改善するまで低調傾向が続く可能性がある」と危惧した。

 子牛の繁殖農家の経営は厳しさを増している。糸満市南波平で90頭を飼養する繁殖農家の山城義光さん(43)は「数年前と比べて生産コストは跳ね上がり、経営は厳しくなる一方だ」と吐露する。

 山城さんは南部家畜市場で開かれる競りに毎月4~7頭を出品している。新型コロナ流行以前の2019年には1頭当たり平均90万円の高値を付けることもあったが、直近にあった8月の競りでは平均53万円と過去最低水準を記録した。円安などで海外からの輸入に頼る飼料の価格高騰が避けられない中、生産コストを少しでも削減するため自給の粗飼料を増やしたり、栄養添加剤の量を調整したりと試行錯誤を重ねているが、自助努力だけでは限界があると訴える。

 「せっかく県産和牛のブランドが確立されつつあるのに、この厳しい状況を機に辞めようかと迷っている農家の知り合いも少なくない」。山城さんは県内に約3千戸ある繁殖農家が経営を持続できるよう、行政に対して財政支援を検討してほしいと訴えた。
 (当銘千絵)