SNS活用、若手が躍進 ”どぶ板”からネットへ ITで政治と有権者つなぐ<議会に吹く風>下


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昼は街頭に立ち、夜は事務所でインスタグラムのライブ配信をする嘉陽宗一郎さん=7日、名護市宇茂佐の森の選挙事務所

 「皆さんにとって一番近い存在であることを約束します!」。9月4日の名護市議選告示日、嘉陽宗一郎さん(27)が声を張り上げた。目の前には人だかりではなく、スマートフォンがあった。

 琉球大学時代にイベントなどを運営した嘉陽さんにとって写真と動画を気軽に共有できるインスタグラムは「発信力の高いSNS」。両親は市出身ではないため地縁血縁の強みはなく、知名度向上のために中心市街地などでの手振りなど昔ながらの選挙戦を展開した。同時にインスタグラムで手振りやポスター貼りの様子を拡散。「リアルとネットをつなげたことで支援してくれる人が増えた」と振り返る。

 4179人いる嘉陽さんのインスタグラムのフォロワーの1人、名桜大学2年の藤原佳大さん(20)は「SNSでつながっていることで選挙活動がよく見える。他の候補者の顔や名前は知らないけど、インスタライブなどで嘉陽さんのことは身近に感じた」と話す。

 石垣市議選で最年少、トップ当選を果たしたのは25歳の新人、高良宗矩(むねのり)さん。告示の半年前から街頭に立つなどして知名度を高めつつSNSも活用した。SNSの種類ごとに画像と文章をどちらを厚めに投稿するかなど工夫を凝らしたが「誰よりも地域を回ったと思う。SNSだけでは難しかった」と語る。“どぶ板”で地盤を固めSNSを有効活用したことが勝因だ。

 2021年に西原町議会での質疑の様子や議事録などを収めた「非公式西原町議会アプリ」を開発するなど議会の見える化に取り組む琉球大医学部大学院1年の伊佐さんは、若い候補者の上位当選に「有権者が潜在的に議会に新しい風を吹かせることを望んでいるのではないか」と語る。アプリ開発に携わった同大理学部4年の城間亮太さんは「若い候補者だから当選したというよりも、情報の発信力が今回の上位当選につながったと思う」と指摘。「候補者には選挙中に限らず、これからもどんどん情報発信に努めてほしい。受け手側である有権者も一般質問を傍聴したり、議会だよりを見たり、能動的に情報収集し、政治に関わるべきだ」と述べ、IT(情報技術)は政治と有権者をつなぐ“入り口”になるとの見方を示した。

※注:高良宗矩さんの「高」は旧字体

(松堂秀樹まとめ)


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