<識者談話>産官学連携で社会に利益 稲垣純一理事長(沖縄ITイノベーション 戦略センター) 


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稲垣 純一理事長

 情報処理の歴史を見ると、最初はハードウエアが発展し、次にソフトウエア、サービスが発展し、今やデータへと変わってきた。ハードとソフトの高度化で扱えるデータ量が桁違いになり、社会全体を高度化させることができるが、これまでの経緯を見ると消費者のビッグデータを囲い込んだ企業が大きな利益を上げてきた。

 将来的には地方や中小企業であっても、データが自由に使えるようになることが望ましい。一企業がデータを囲い込むよりも、オープンにして社会全体の利益につなげる方が格段に効果が大きい。まずは行政が情報を利用しやすい形で統一、提供して先導役になる必要がある。県と市町村が積極的に取り組むことが望ましい。

 行政のオープンデータが進むメリットは大きい。例えば、スマートフォンさえあれば初めて行く観光地でも公衆トイレの場所が分かり、二次交通がさらに利用しやすくなる。沖縄が遠隔地であるための不便さは相当程度解消できるだろう。

 行政情報以外に、携帯電話の位置情報から分かる人流やクレジットカードの購買データ、SNSデータなども駆使することで先進的な観光サービスが提供できる。観光で得られた知見は他産業にも広がる。県産品の消費や県外・海外への輸出にも効果を発揮する。産官学でオープンデータに取り組むことが沖縄の発展につながる。

 将来的にはあらゆるデータが国際規格のプラットフォームから入手でき、個人がデータを直接活用する時代が来る。

 データは空気や水のように個人が生きる糧として普通に利用できるモノになる。そうなることで地方の企業や個人の利益がより大きくなるだろう。


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