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「特別」でない教育を<伊是名夏子100センチの視界から>131


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
イラストも描き、手作りした結婚式の招待状

 障害のある子どもには専門的な手厚い教育が必要だから、地域の学校ではない特別な学校に通った方がいい、そう思う人はいませんか? しかし今月、日本政府は国連の障害者権利条約に基づき「障害のある子とない子を分ける特別支援教育をなくすこと」と勧告を受けました。日本は国連の障害者権利条約を2014年に批准し、先月、批准後、初の審査があり、日本からは100人の障害のある人が現地スイスに行きました。そして受けた勧告は、特別支援教育をなくすことをはじめ92項目にわたります。

 今、多くの国では、障害のある子とない子を分けるのではなく、いろいろな子どもが一緒に教育を受ける「インクルーシブ教育」が基準になっています。しかし今の日本はそれに逆行し、特別支援学級や特別支援学校に在籍する児童・生徒数は増え、新設されています。インクルーシブ教育について語るのも特別支援の関係者が多く、通常の学校ではなかなか進みません。

 理由のひとつは、教員数をはじめとする、子どもと関わる専門家の数が足りていない、予算を付けていないことが原因でしょう。担任すらいない学級もある中、いろいろな子どもの学びを支える教員数は圧倒的に足りなく、医療的ケアが必要な子どもには看護師不足もあります。また人手だけなく、階段だけでエレベーターがなかったり、視覚に障害がある子ども用の教材がなかったり、手話通訳や文字通訳が提供されず、障害のある子の学びを保障する環境が整っていないこともあるでしょう。障害のある人が、障害のない人と同じように生活するための変更や調整を「合理的配慮」といい、それを提供することは法律で定められています。しかし実際は守られていません。

 そして障害のある子とない子を分けることがいいことだ、と考える人が多いことも原因ではないでしょうか? 障害のある子どもは、特別支援学校を選んでいるのではなく、地域の学校に通えない状況だからという理由もあります。選択肢がないのに、選択肢を与えられているように見える、区別の構造がつらいです。そしてそれは差別でもあります。

 インクルーシブ教育は障害だけでなく、不登校やセクシャルマイノリティー、日本語を第一言語としない子どもなど、いろいろな子どもを含みます。すべての子どもが安心して教育を受けられる場所を、特別にではなく、当たり前に、地域のあらゆるところに、つくっていきませんか?


 いぜな・なつこ 1982年那覇市生まれ。コラムニスト。骨形成不全症のため車いすで生活しながら2人の子育てに奮闘中。現在は神奈川県在住。