沖縄本島の小学校に勤務する30代の女性教員は、心療内科に通院していることを誰にも相談できず、薬を服用しながら担任を務めている。指導方法で他の教員と食い違いが生じて調子を崩した。病休を取る決断ができないまま、毎朝体を引きずるようにベッドを這(は)い出て、薬を飲み出勤している。「スクールカウンセラーは非常勤で、子どもの相談時間もあまり取れない。自分のことを相談できるわけがない」。休日、保護者に見られる心配が少ない遠方の心療内科に通い、仕事を続けている。
発端は宿題の量だった。4月、宿題の内容と量を学年で統一した。「宿題に差があると、保護者が不満に思う可能性がある」という学年主任の考えだった。当初は女性も賛同したが、その後、宿題の間違いを点検する余裕がない保護者が多くいることに気付いた。「自分で指導できる量の宿題にしたい」と主任に相談し、量を減らした。その後「自分勝手だと言っていたよ」と話す同僚や保護者が何人かいて、関係が悪化した。「意図は分かるけど(宿題が)少な過ぎると思う」という同僚もいた。
「自分の努力不足かもしれない」。女性は落ち込み、少し宿題の量を戻した。放課後までに目を通せないため、連日家に持ち帰り、漢字の間違いや日記を添削している。教材づくりもあり、夜10時頃まで仕事をしている。
夜は精神安定剤と、眠る前に睡眠導入剤を飲む。「ぼーっとして、仕事の速度が落ちる。本当は病休を取りたい。でも、やっぱり頑張れなかったと思われたくない」。食欲不振で、体重は4月から8キロ落ちた。身近に相談できる人を見つけられないまま、仕事を続けている。
(嘉数陽)
相談環境の整備急務
博愛病院心療内科の原信一郎医師の話 企業は社員数に応じて産業医を確保するが、教職員のための相談環境整備は進んでいない。子どものために尽くそうとする、献身的で真面目な性格の人が教員には多い。周りから過剰に求められる職種でもある。労働環境の改善が遅々として進まないからこそ、相談環境の整備は急務と言える。
県内でも、自治体によっては教育委員会が産業医を確保しているケースがある。ただ仕事を抜けられず、結局面談できなかった教師もいる。どれだけ活用されているか、見直しも必要だろう。