共生へ、報道の役割を模索 識者らが那覇で平和シンポ


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 早稲田大学グローバルアジア研究拠点主催のシンポジウム「揺らぐ国際秩序のなかの平和論」が23日、那覇市の県市町村自治会館で開かれた。ウクライナ紛争で国際秩序が揺らぎ東アジアでも米中対立が懸念される中、分断ではなく共生を促す沖縄の役割について議論を深めた。

 「平和のためのジャーナリズム~SNS時代のマスメディアの役割」がテーマのパネルディスカッションでは、台湾有事を巡る報道やジャーナリズムの在り方などについて意見を交わした。

 琉球新報の新垣毅論説副委員長は、米軍基地が集中する沖縄の負担を訴え、政府などを「対米自立精神が欠けており、米国の戦略をきちんと検証できていない」と批判した。基地強化にあらがう沖縄の民意に対する、SNS上のヘイト言説に危機感を募らせた。

 早稲田大国際学術院の上杉勇司教授は「SNSはフェイクニュースに踊らされる懸念がある。誰もが情報発信できる時代にメディアはどう差別化を図るのか」と述べ、メディアの役割を改めて問うた。

 沖縄タイムスの黒島美奈子論説副委員長は「SNSでは誰もが情報を発信できる一方で、自分の好む情報しか集まらないようにすることもできる」と指摘。新聞のデジタル化に取り組む中で、必要な情報を届けられないジレンマを報告した。

 早稲田大アジア太平洋研究科の植木千可子教授は、台湾有事の懸念について「米軍が2021年に『6年以内に可能性がある』と指摘しているが、特に根拠がないままに議論が進んでいる」と語る。台湾を巡る米中の緊張は、中国の躍進が底流にあると指摘した。

 沖縄平和協力センターの本田路晴上席研究員は先島へのシェルター整備計画に関する、県内の報道に触れ「本土にいる者として、深く考えずに『台湾が有事になると大変だ、先島に自衛隊を配備しないと』と思ってしまう」と述べ、ミスリードの危険性を訴えた。
 (小波津智也)