保育事故防止へ課題を探る 乳児死亡を受けシンポ


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 7月に那覇市の認可外保育園で生後3カ月の男児が心肺停止の状態で救急搬送された後、死亡した件を受け、県私立保育園連盟(上原東会長)は23日、シンポジウム「おきなわの保育のあんぜん~私たちの『保育』はどうあるべきか~」を南風原町喜屋武の町立中央公民館で開いた。来場やオンラインで約700人が参加し、保育事故で亡くなった子どもたちに黙とうをささげた。

 シンポジウムでは、専門家が保育事故の傾向と具体的な防止策、行政の責任と日本の保育が抱える構造的な問題などを解説した。保育園長や母親らも登壇し、事故・事件を再び起こさないために、子どもの安全・安心が保障される社会の実現を呼び掛ける宣言を採択した。

 保育事故を20年以上取材してきた、ジャーナリストで名寄市立大特命教授の猪熊弘子さんは基調講演で、0歳児が園内で睡眠中に起こる死亡事故が最も多いと指摘した。具体的な防止策として(1)うつぶせ寝にしない(2)表情、顔色が見える明るい所で寝かせる(3)定期的に呼吸を確かめる(4)寝具が顔にかからないように周りの物に気を付ける―を挙げた。その上で「事故は職員1人のミスから起きるわけではなく、職員みんなで情報・対策が共有されていないなど、複合的な要因で起こる」と強調した。

 沖縄弁護士会貧困問題対策特別委員会委員長の大井琢さんは、公的な基準がない認可外保育園での事故に対する行政の責任を2次的、補充的なものとした2020年の判例を示して、制度的な問題を指摘した。「行政は認可外保育園での事故に人ごとのように対応している」と指摘した。

 シンポジウムでは、保育の質を保つために職員の待遇改善が不可欠として、国をはじめとした行政に厚い予算措置を求める声が上がった。 (安里周悟)