【深掘り】普天間第二小のPFAS土壌汚染、子どもたちの健康への影響は?


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 【宜野湾】沖縄県宜野湾市の普天間第二小学校での市民団体による土壌調査で、高濃度の有機フッ素化合物(PFAS)が検出された。これを受けて市は環境省の資料を基に独自試算を発表。最大経口摂取量がPFASなどの1日当たりの耐容摂取量を大きく下回っているとして、健康への影響は「極めて小さい」とした。市民団体は、市の試算は米国の基準値が改変される前の古い値で算出されているとして、「安全根拠の説明に納得がいかない」と訴えている。

宜野湾ちゅら水会の依頼を受け、有機フッ素化合物PFASの含有度調査のため土壌を採取する県環境科学センターの職員=8月15日、普天間第二小学校のグラウンド周辺

 発がん性などの有害性が指摘されるPFASの環境基準について、日本は水質についての暫定指針値があるものの、土壌の基準値は定めていない。普天間第二小の土壌を調べた宜野湾ちゅら水会の調査結果では、最も値が高かった箇所で、土壌1キログラム当たりPFOS1100ナノグラム、PFOA600ナノグラムを検出した。日本での基準値がないため、米国環境保護庁(EPA)が示している土壌から地下水への汚染を防止するためのスクリーニングレベル値(PFOS38ナノグラム、PFOA920ナノグラム)と比較すると、第二小で検出されたPFOSは約29倍となった。

 市はその結果を受け、環境省の資料を基に試算。子どもの1日当たりの土(飛散など)の最大経口摂取量の値が0.34ナノグラムで、PFASなどの耐容1日摂取量300ナノグラムを大きく下回っているとして、グラウンドの土ぼこりなどを児童が吸い込んだ場合による健康への影響は「極めて小さい」とした。加えて、行政による調査は国や県の助言を受けながら対応するとした。当面は土ぼこりなどを極力抑えるためのスプリンクラーの利用や高濃度の数値が検出された場所にパイロンを設置して対応するという。

 一方で、EPAはことし6月、PFASの毒性をより重く捉え、飲料水の生涯健康勧告値を従来の値の約3千分の1に引き下げている。

 宜野湾ちゅら水会と「有機フッ素化合物(PFAS)汚染から市民の生命を守る連絡会」は、市役所を訪れて影響が小さいとした市に対して抗議。市が基にした環境省の耐容摂取量300ナノグラムは最新基準では3千分の1の0.1ナノグラムになると指摘。市が分析した1日当たり最大経口摂取量の0.34ナノグラムが耐容摂取量を超えるとし、「(市の結果は)逆転する」と強調した。「影響は極めて小さい」とした市のコメントを強く批判し、普天間第二小全域と通学路など周辺調査の実施を求めた。

 県は、7月に池田竹州副知事が上京し、米軍基地周辺で問題となっているPFAS汚染について関係省庁に対策の実施を求めた。要請終了後に取材に応じた池田副知事によると、環境省水・大気環境局の秦康之局長は、土壌中のPFASを測定する方法について「検討しており、早めに出せるように作業を進めたい」と述べている。

(新垣若菜)