【深掘り】自衛隊の南西諸島配備巡りすれ違い…玉城沖縄知事と浜田防衛相が会談、それぞれの思惑は


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面談を終えて浜田靖一防衛相(左)とあいさつを交わす玉城デニー知事=28日、県庁(喜瀬守昭撮影)

 浜田靖一防衛相との初会談に臨んだ玉城デニー知事は冒頭、米軍基地問題よりも先に、自衛隊の南西諸島配備計画に関し、地元の理解が得られるよう丁寧な説明を求めた。国家安全保障戦略などの「安保関連3文書」を巡っても、これ以上の基地負担を強いることがないようくぎを刺した。関係者によると、一連の知事発言は、沖縄への自衛隊配備を強化する政府の路線をけん制する意図があった。

 一方、この日の会談で浜田防衛相は「南西地域の防衛体制を目に見える形で強化する」と表明するなど、中国の軍事活動を念頭に自衛隊整備の強化を進める考えを強調。安保関連3文書を巡る知事の要望にも「引き続き検討している」と述べるにとどめた。次年度の予算編成や安全保障戦略の策定の過程で、さらなる自衛隊配備強化に余地を残した格好だ。

 反対押し切り

 8月に就任した浜田防衛相は今月21日にも来県し、与那国町の陸上自衛隊与那国駐屯地を視察していた。「最前線」(自衛隊員)の現場を実際に見たいという浜田防衛相の意向があったという。

 28日に大臣就任後初めて沖縄本島を訪れたが、2週連続の来県という異例の対応となった。背景には、中国の動きを念頭に南西諸島での防衛体制の強化を「喫緊の課題」(浜田防衛相)と捉え、特に注力したいという方針がある。防衛省関係者は「(浜田防衛相は)安全保障環境が厳しさを増す中で、県民の反対はあっても、そこで止まらずに南西諸島の防衛強化をしっかり進めて結果を出す考えを示している。これまで以上に強硬になる可能性がある」と解説した。

 こうした防衛相の対応に対し、与党県議からは「危機感をあおり、先島を台湾有事に近づけようとしている。平和外交を求める県の意見を聞くつもりがないと言っているようなものだ」と冷ややかな見方を示す。一方、県関係者は「米軍基地関係で具体的な回答はなかったが、自衛隊で配備を強化する意思は見え隠れした。今後の発言を注視していく必要がある」と警戒感を示した。

 「ゼロ回答」

 県政最大の課題となる米軍普天間飛行場の危険性除去に関し「反対の民意は示された」として移設断念を求めた玉城知事に対し、浜田防衛相は「辺野古が唯一の解決策」として、従来の政府答弁を述べるにとどめた。さらに、辺野古移設を容認し、11日の市長選で当選した松川正則宜野湾市長も、普天間の返還期日を示すよう求めたものの、浜田防衛相から具体的な返答はなかった。

 容認、反対のいずれの要望に対しても、事実上の「ゼロ回答」に終始し、具体的な進展はみられなかった。県関係者は「辺野古に関しての反応は織り込み済み。いずれにしても反対の民意は出ているので、県の立場を国内外に訴えていくだけだ」と強調した。
 (池田哲平、明真南斗、大嶺雅俊)