【記者解説】2期目の玉城知事が求めた基地負担軽減の枠組み…「リンク論」ちらつかせる政府との今後の展開は


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玉城デニ―知事(資料写真)

 玉城デニー知事は3日の松野博一官房長官との会談で、米軍普天間飛行場移設に伴う名護市辺野古の新基地建設に改めて反対する姿勢を示した。南西諸島での防衛力強化を目指す米軍と自衛隊による「南西シフト」も「基地負担強化が懸念される」と指摘した。

 玉城知事が松野氏との会談で強く求めたのは、日米両政府と県の3者による協議機関「SACOWO(サコワ)」など協議の場の設置だ。会談後の会見で、松野氏の反応について「協議を進めていきたいという考え方に(県と国に)齟齬(そご)はないという印象を受けた」と強調。県知事選での信任を追い風に、2期目の始動直後から政府に基地負担軽減に向けた取り組みの加速を求めた格好だ。

 ただ、岸田文雄首相は3日の所信表明演説で辺野古移設を堅持する構えを示しながらも、地元への「対話」と「信頼」の必要性について従来の言及を省くなど、地元の理解を得ようとする動きを後退させるかのような表現もあった。外交・安全保障政策に沖縄振興を位置づけ、「基地」と「経済」を連動させる政府の思惑も透ける。

 玉城知事は、こうした「リンク論」をちらつかせる政府の姿勢を記者団から問われると「基地の跡地利用は沖縄の振興計画にも大きく寄与する」と述べた。背景には政府側のロジックを拒絶せず、逆に利用しようとする姿勢が垣間見えた。

 膠着(こうちゃく)状態が続く基地問題の交渉。新基地建設断念を求める玉城氏には政府や米側の主張や立場をも利用する、こうした老練さに磨きをかけることが求められる。
 (安里洋輔)