保革で割り切れない葛藤…激動の沖縄を生き抜いた8人の知事から見えることは 野添文彬氏(沖縄国際大准教授)に聞く


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野添文彬准教授

 沖縄が日本復帰50年を迎えた年の県知事選で、玉城デニー知事が再選を果たした。玉城県政は2期目に突入する。近著「沖縄県知事―その人生と思想」で歴代8人の県知事の人生をまとめた沖縄国際大の野添文彬准教授(日本外交史)に、著書の内容を踏まえ、今回の知事選や歴代知事の共通点、沖縄政治の現状について聞いた。 (明真南斗)

 復帰後、約10年おきに保守陣営が推す知事と革新、名護市辺野古新基地建設反対で一致する「オール沖縄」勢力が推す知事の間で交代してきた。野添氏は「革新の知事でも日本政府と協調したり基地問題で妥協したりするなど、時に『現実的』な立場を取った」とし「保守の知事も、米軍基地の整理縮小や日米地位協定の改定を求めた」と説明。

 葛藤しながら県政を運営する知事たちの姿は「保革などの二項対立で割り切れない複雑な沖縄政治を象徴している」と指摘した。

 今回の知事選は、経済的に苦境に陥っているという点で、稲嶺恵一元知事が県政を奪還した1998年の選挙と似通っていたが、県政交代には至らなかった。その違いを野添氏は「保革を超えた県民全体への配慮があったか否か」と分析する。

 時の流れや世代交代とともに、基地を容認する割合も増えてきたことも事実で、沖縄政治も変化を迎えつつある半面、基地を容認する立場の人でも削減は望むなど基地に対して複雑な県民感情は根強い。

 98年の選挙で稲嶺氏は革新の人にも支援を受けるなど左右にウイングを広げており、辺野古移設についても反対感情に配慮して『15年使用期限』や『軍民共用』という条件を付けていた。今回の知事選で佐喜真淳氏は辺野古移設容認を明言していた。

 一方、玉城知事の陣営は時代に伴う変化を捉えて「辺野古反対だけでなく、経済回復や子どもの貧困対策を挙げて戦ったことが勝利につながったのだろう」と語った。

 沖縄の歴史の特殊性や基地問題を抱える事情から「沖縄県知事は難しいかじ取りを迫られる立場で、全国でも独特の存在だ。県民をまとめる力、政府と対峙(たいじ)する力が求められる」と話した。だからこそ、歴代知事は保守でも革新でも一辺倒ではなく、葛藤しながら県政運営する立場を取ってきたと解釈している。

 近著の狙いについて「8人の人生を通して沖縄を立体的に描き、日本全国の人々に沖縄の歴史を知ってほしい」と説明する。各知事について、幼少期からの知事就任までの半生も詳しく書くことにこだわった。「激動の時代を生き抜いてきたことが、それぞれの知事の強い個性を生んできたと改めて感じた」と語った。

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 のぞえ・ふみあき 沖縄国際大学准教授。一橋大学大学院法学研究科博士課程修了、博士(法学)。専門は国際政治学、日本外交史、沖縄の基地問題。歴代知事の人生をまとめた近著は「沖縄県知事―その人生と思想」。その他の主な著書に「沖縄米軍基地全史」(吉川弘文館、2020年)などがある。