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苦手を受け止めて<伊是名夏子100センチの視界から>132


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イラストも描き、手作りした結婚式の招待状

 運動会シーズン真っ盛り。練習を重ね、一生懸命リレーやダンスをする子どもたちの姿は誇らしいですよね。一方で憂鬱(ゆううつ)な子どももいるかもしれません。運動が好きではない子、踊るのが恥ずかしい子、暑さが苦手な子には運動会はハードルが高いでしょう。運動会はテストと違って公開行事として開催されるので、多くの人が見に来ます。一目瞭然で得意不得意が分かり、評価をされやすい場面の一つです。大人が思っている以上に、子どもの受けるストレスは大きいかもしれません。運動会で活躍する子どもがいるのと同時に、傷を受ける子どももいることも心に留め、それをどうやったら減らせるかを考えていきたいです。

 「みんなちがってみんないい」とよく言われますが、子どもを競争させること、点数をつけること、評価することは、なかなかなくなりません。また「勉強が苦手でも、絵を描くのが上手」「音楽ができなくても、運動が得意だからいい」「障害があっても、やれることがあるから大丈夫」というのは、褒め言葉や励ましとして捉えられる時もあれば「できることがいい」という能力主義のメッセージにもつながります。得意と苦手を比べるのではなく、苦手なことを肯定し、できないことがあるのは当たり前という声掛けも時には大切ではないでしょうか。

 また苦手なことを努力して克服するのはいいことですが、絶対にそうしないといけないわけではなく、苦手なことに向き合いたいかどうかは、自分で決めて大丈夫です。それが本当の「みんなちがってみんないい」ではないでしょうか?

 生きていると次から次へと失敗が重なり、にっちもさっちもいかないことがあります。自信がなくなり、得意なことを得意とすら思えないこともあります。また得意なことと苦手なことは紙一重で、例えば時間にルーズな人は相手の遅刻にも寛容なように、同じ物事でも見方次第で、いい面と悪い面の両方に捉えることができます。いいことなのか、悪いことなのかを決めるのはとても難しいです。そんな時、周りからの評価でいいことなのか、悪いことなのかを決めるのではなく、自分にとっていいことなのか、悪いことなのか、自分がやりたいことなのか、やりたくないことなのか、うれしいのか、嫌なのかと考えてみることは、自分を大切にする一つの方法です。なかなかなくならない評価や競争の中、自分を大切にして、安心できる方法も学びたいですね。


 いぜな・なつこ 1982年那覇市生まれ。コラムニスト。骨形成不全症のため車いすで生活しながら2人の子育てに奮闘中。現在は神奈川県在住。