32軍壕の継承「住民視点で」 ガイドの重要性を認識 沖縄―長野市民交流、那覇で報告会


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松代壕を視察しての感想などが語られた「戦争の記憶を継承するための沖縄―長野市民交流」の報告会=1日、那覇市おもろまちの県立博物館・美術館

 9月2~4日に長野市を訪れ、松代大本営地下壕(松代壕)などを視察した「戦争の記憶を継承するための沖縄―長野市民交流」のメンバーらは1日、県立博物館・美術館で報告会を開いた。那覇市の第32軍司令部壕(32軍壕)の継承の在り方について考えようと長野を訪れた参加者らは、天皇制国家体制を維持する「国体護持」の犠牲となった沖縄戦を見つめ直し、継承への思いを強めたことなどを報告した。

 報告会には約80人が参加。沖縄戦研究者の川満彰さんは長野視察を踏まえ、32軍壕を「住民」の視点で「戦争をしない・させない」ための展示にすることを提案した。「軍より住民の犠牲が多い沖縄戦や、今の基地問題をもたらした大本営の戦争責任を住民視点ではっきりさせた方が良い」と指摘した。

 南風原平和ガイドの会の井出佳代子会長は、松代壕での平和ガイドの説明や沖縄陸軍病院南風原壕での会の実践を踏まえ、ガイドや資料館の重要性を感じたといい「戦跡は“記憶の集積”と言われるが、何が起きたのか伝える人がいて初めて意味を持つ」と語った。

 琉球新報と連携して連日、交流を大きく報道した信濃毎日新聞の竹越萌子記者は取材での「気づき」として「二度と戦争をさせないという視点や最も被害を受けた人の視点での継承を長野側で生かしていくことが大事だと思う」と見据えた。本紙の中村万里子編集委員は本土が加害の歴史を見つめる必要などを話した。コーディネーターはツアー団長で本紙客員編集委員の藤原健さんが務めた。藤原さんは交流を通じて沖縄戦を見つめ直し、継承の質を高める意義を強調した。
 (中村万里子)