インボイス制度開始まで1年 沖縄県内の登録伸び悩み 負担増、反対の声も


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 2023年10月に始まり、事業者が消費税の納税額を正確に把握するための「インボイス制度(適格請求書等保存方式)」。開始まで1年を切ったが周知の遅れが課題となっている。東京商工リサーチの調べでは県内法人の登録は38・1%と、全国35位の低い水準で伸び悩む。負担が増えることなどから導入に反対する声も根強い。

 インボイスは「適格請求書」のことで、売り上げ先の名称、取引年月日、適用税率など6項目を記載する。事業者が消費税の納税額を正確に計算するための書類。売り上げの消費税額から仕入れや経費の消費税額を差し引いて計算する仕入れ税額控除を受けるにはインボイスの保存が必要となる。売り手はインボイスの発行事業者として事前に税務署に登録し、課税事業者として消費税の申告が必要になる。

 新制度は消費税率が2019年に10%に引き上げられ、食料品などに対しては8%の軽減税率が導入されたことが背景にある。

 事業者は売り上げの消費税から仕入れ業者に支払った消費税を差し引いた税額を国に納めている。軽減税率が導入されるまでは、税込みの仕入れ総額さえ分かれば前の事業者の納税額を簡単に推計でき、請求書への税率や税額の記載は不要だった。しかし複数税率になると納税額の推計が難しくなるため、制度の導入が決まった。

 開始と同時に制度を利用するには、原則として23年3月末までに税務署に申請しなければならない。沖縄国税事務所は「取り組みが遅れれば企業間取引に影響を及ぼす恐れもあり、早めの対応をお願いしたい」と注意を呼び掛けている。

 ただ、東京商工リサーチによると、8月末現在で法人の登録は全国79万7205件で、2016年経済センサスの法人企業数を基にした登録率は42・5%にとどまる。沖縄は5820件で38・1%と全国平均を4・4ポイント下回る。沖縄支店の担当者は「周知が進んでいないのではないか」と指摘する。

 課税売上高が1千万円以下で消費税の納税を免除されている免税事業者が発行事業者の登録を受ける場合、新たに課税事業者になる必要がある。売り手が免税事業者だと、買い手の事業者は仕入れ税額控除ができないため経費が増える。免税事業者は取引先から課税事業者として発行事業者登録を受けることを求められる可能性もある。

 一方、課税事業者になると消費税を納める事務的、金銭的負担が増えるため、個人事業主らを中心にインボイス制度に反対する声は少なくない。県個人タクシー事業協同組合の仲村修事務局長は「年間売り上げが200~300万円程度しかない個人タクシーにとって、課税事業者になれば負担は大きい」と話す。「インボイスを発行できなければ運賃を経費で落とすことができない。そうした車両に客が乗ればトラブルになることも考えられる。いいところは一つも無い」と制度導入に反対した。

 沖縄国税事務所は「定期的に説明会を開催し、特集サイトやコールセンターを設けている。免税事業者は取引先と協議する必要もあると思われるので、説明会などを活用して制度を十分に理解した上で課税事業者になるかを検討してほしい」と語った。(小波津智也)