「実績」重ね既成事実化 自衛隊の中城湾港利用計画 有事を詳細に想定、進む地ならし


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昨年の自衛隊統合演習で民間船から陸揚げされる陸上自衛隊の装甲車=2021年11月21日、沖縄市の中城湾港新港地区

 日米共同訓練の最中に中城湾港を使う自衛隊の計画は、県内のあらゆる民間港を使えるようにする環境づくりの一環だ。詳細に有事を想定し、素早く部隊を沖縄に展開する体制を目指している。訓練での「実績」を重ねることで、自衛隊による民間港利用を既成事実化しようとする狙いが見え隠れする。

 昨年の自衛隊統合演習でも中城湾港や石垣市の石垣港、与那国町の祖納港を使って県内の反発を招いた。港湾労働者からも不安の声が上がった。自衛隊統合演習では初めて県内の民間港を使用した。今回はさらに米側との共同訓練の一環に位置付けており、有事の日米共同対処の中でも民間港の使用が想定される。

 防衛省としては、有事の際に自衛隊施設以外の民間港も利用できるようにして、海から部隊や装備を持ち込める地点が多ければ多いほどいいと考えている。どこかが遮断されても別の箇所を使えるためだ。

 輸送を検討していた最新鋭の装輪装甲車「16式機動戦闘車」(MCV)は、キャタピラで走る戦車とは違ってタイヤが付いているため、攻撃機能を持ちながらも舗装された道路を最高時速約100キロで走ることができる。市街地での戦闘に対応するものだ。今回は輸送を断念する公算が大きいが、訓練で持ち込む意向は持ち続けており、沖縄本島に敵が上陸することも想定に入れていることがうかがえる。

 詳細に有事を想定する一方でMCVや地対空誘導弾パトリオット(PAC3)の輸送は取りやめる方向で議論が進む。中城湾港への輸送は最終目的ではなく、民間港の利用拡大に向けた地ならしが進められている。