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飼育中のヤギ10頭以上が行方不明…沖縄本島南部で盗難被害相次ぐ 需要増、関係者「被害もっとある」


この記事を書いた人 Avatar photo 高辻 浩之
三つ子のうち2頭の行方が分からなくなった小屋で、きょうだいの帰りを待つヤギ=4日、南城市

「毎日、成長を見るのが楽しみだった。ヒージャーは財産であって生きがい。許せない」。生後2カ月の子ヤギ2頭が盗難に遭ったという南城市の80代男性は憤る。県内では今年に入り、本島南部を中心に飼育中のヤギが行方不明になる事案が相次いでいる。関係者によると南城市などにある複数のヤギ小屋から、少なくとも10頭以上のヤギが盗難被害に遭っていて、同時期に4頭がいなくなった集落もある。背景にはコロナ禍で営業自粛していた飲食店などの再開で、ヤギ肉の供給不足が影響しているという。

ヤギの飼育に詳しい関係者は「自販機の販売も人気でヤギ肉需要は高まっている。肉が足りなければ、取引値も上がる。表面化していないだけで、被害はもっとある」と懸念を示す。

与那原署は9月、南城市のヤギ小屋から重さ約100キロの雄ヤギ1頭を盗んだとして、豊見城市の会社員の男(24)を逮捕した。同署には、ほかにもヤギの被害相談が複数寄せられ、連続窃盗事件の可能性も視野に調べを進めている。

関係者によると、男が盗んだヤギは出生確認番号が印字されたタグ(耳標)を身に付けていた。盗難届の情報とヤギの特徴が一致し、飼い主の元に返されたという。

県のまとめでは、県内で飼育されているヤギは1万776頭(2021年12月末)。21年に県家畜改良協会に出生届があったヤギは約千頭余で、全体の約10%と少ない。同協会によると、出生届を行うとヤギの出生確認番号と耳標が得られるほか、生年月日や生産者などが明確化され、競り市場などで正当な評価を受けやすくなる。

しかし、県内では届け出に千円超の手数料負担があることや、庭先売買が盛んに行われ飼い主が入れ替わることなどから、出生届の手続きはあまり普及していないという。

同協会は、盗難防止が目的の耳標ではないが、個体識別が可能になることなどから、出生届の申請を生産者らに呼び掛けている。

1日平均7~8頭のヤギを取り扱う南城市の県食肉センターでは、コロナ禍で一時、落ち込んでいたヤギ肉需要が回復傾向にある。食肉処理の予約は数日後までいっぱいで、生産者らは順番待ちをする日が続いてる。

同センターによると、持ち込まれたヤギは性別や年齢などの確認、生体検査などを行うが、出生届などの提出義務はない。

盗難情報などがあれば対応を検討するが、盗難に遭ったヤギか判別する手だてはないのが現状だという。

(高辻浩之)


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