延長サヨナラ、「全員野球」で栄冠再び 軟式野球成年男子、35年ぶり優勝 とちぎ国体


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 【栃木国体取材班】第77回国民体育大会「いちご一会とちぎ国体」競技最終日は10日、栃木県内各地で行われ、沖縄代表は軟式野球の成年男子が福岡(福岡サニクリーン)に2―1で延長十回サヨナラ勝ちし、1987年の海邦国体以来35年ぶりに優勝をつかみ取った。陸上の少年男子A300メートル決勝は、平川慧(コザ高)が33秒18を記録し、準優勝を決めた。カヌースプリントの成年女子カヤックシングル(200メートル)では大城美華(県協会)が45秒077で3位に入賞した。同少年男子のカナディアンシングル(同)の山城翔(沖縄水産高)は5位だった。ボウリングの成年女子団体(4人チーム)で沖縄(川上菜緒=KDDIエボルバ、稲福心衣奈=鏡が丘特別支援学校職、古堅葉月=第一生命、仲宗根雅恵=とくりん薬局エース)が合計4223得点で3位入賞を果たした。重量挙げは女子71キロ級で福里悠(県協会)がトータル4位、同59キロ級の比嘉成(本部高)がトータル6位に入った。少年男子102キロ級の並里高仙(沖縄水産高)は5位となり、競技別合計112得点を挙げ、総合1位をつかんだ。銃剣道の成年男子は3回戦敗退となった。大会は11日に閉会式を迎えた。


 

グラウンドに集まり、抱き合いながら優勝を喜び合う沖縄選抜の選手ら=10日、栃木県の宇都宮清原球場(砂川博範撮影)

 「全員でつなぐ野球」で手にした栄冠だった。同点で迎えた延長十回裏。先頭の上間智晴が四球で出塁すると、犠打を試みた永山大貴の打球が内野安打に。続く喜友名真士が犠打を成功し、1死二、三塁の好機をつくった。最後は西川寛仁の投ゴロの間に上間が本塁に滑り込み、決勝点をつかんだ。優勝が決まると、選手らはグラウンドに集まり喜びを分かち合った。

 五回まで相手のペースで試合が進んだ。四回には今大会で初めて先制点を許した。それでも六回以降は守備陣の好プレーが続き、沖縄代表が徐々に流れを引き寄せた。七回に同点に追い付くと、互いに一歩も譲らないまま延長に突入した。

 十回裏の好機で打席に立った西川は「(試合を)決めるつもりでバットを振った」。喜屋武満監督が出したサインはヒットエンドラン。相手投手が投げた瞬間、三走の上間がスタートを切った。内角高めの直球に反応した西川は「転がる打球を見て勝利を確信した」。相手投手の本塁への送球よりも先に、上間が生還した。上間は「足は遅いけど、絶対に行けると信じてホームに突っ込んだ。頭が真っ白になるくらい興奮した」と振り返った。

 沖縄代表の優勝は1987年の海邦国体以来35年ぶり。劇的なサヨナラ勝利で新たな歴史を刻んだ。喜屋武監督は「海邦国体で築かれた栄光を再び手にすることできて本当にうれしい。沖縄野球の発展につながる優勝だ」と喜びをかみしめた。

(砂川博範)


新垣食らい付き 試合振り出しに バット離しながら同点打

7回裏、バットが手から離れながらも同点打を放つ新垣保樹

 新垣保樹がしぶとくボールに食らい付き、試合を振り出しに戻した。1点を追う七回1死三塁で打席に立ち「ここで1点を取らないと、チャンスはもう巡ってこないかもしれない」と考えた。相手バッテリーはヒットエンドランを警戒して投球を大きく外したが、バットから手を離しながらもボールに当てた。

 打球は一塁方向に転がり、既にスタートしていた三走が同点のホームを踏んだ。「どうしても欲しかった1点。監督から『必ずボールに当てろ』を言われていた」と期待に応えた。喜屋武満監督は「ワンプレーで流れが変わるのが野球だ」と言う。新垣の一打でチームが勢いづき、延長戦での勝利につながった。

(砂川博範)